第497話(米国最新情報)シェイクシャック、AIを活用した労働力配置モデルの改革
ファストカジュアル業界において、効率的な人員配置は大きな課題です。シェイクシャックはこの課題を解決するため、AIを駆使した労働力配置モデルを導入し、業務の効率化と顧客体験の向上を目指しています。同社のCEO、ロブ・リンチ氏は、この新しいモデルが「ゲームチェンジャー」になる可能性を示唆しており、従来の方法とは一線を画すものだと強調しています。
これまでシェイクシャックでは、店舗のスタッフ数を売上に基づいて決定していました。しかし、AI主導の新しいシステムでは、各レストランのニーズに合わせて、より正確にスタッフを配置することが可能になります。例えば、店舗ごとのチャネルミックス(デリバリー、ドライブスルー、店内飲食)や、メニューミックス(調理にかかる時間が異なるメニューの比率)などが考慮されるため、業務効率が大幅に向上します。
このような技術の導入は、シェイクシャックに限らず、チポトレやスウィートグリーン、カヴァといった他のファストカジュアルチェーンでも行われています。これらのチェーンは、労働力の効率化と業務の最適化を目指し、AIを活用して各店舗で必要な人員配置を最適化しています。特に、最近のマクロ経済の圧力や価格競争に直面する中で、コスト削減と効率化を同時に実現する手段として、AI技術の活用が注目されています。
シェイクシャックのロブ・リンチ氏は、ゴールドマン・サックス・グローバル・リテーリング・カンファレンスでこの新しい労働力配置モデルの導入について詳しく説明しました。リンチ氏は、労働力配置の精度向上により、スループット(処理能力)の向上や顧客体験の改善が期待できると述べています。また、CEOのケイティ・フォガティ氏も、AIを活用したこのモデルが各レストランのパフォーマンスを大幅に改善する可能性を強調しました。
この新しいシステムは、ピーク時の労働力配置を最適化するだけでなく、閑散期の効率的な業務運営にも寄与します。具体的には、ランチやディナーのピークタイムには必要なスタッフを確保しつつ、それ以外の時間帯にはスタッフを減らすことで、コストを削減しながらもサービスの質を維持することが可能になります。このようなシステムは、今後ますます競争が激化するファストカジュアル業界において、他社との差別化要因となるでしょう。
シェイクシャックの取り組みは、同業他社にとっても一つのベンチマークとなるかもしれません。例えば、カヴァは新しい労働モデルを75店舗でテストしており、来年には全店舗に導入する計画を発表しています。また、スウィートグリーンのCEOであるジョナサン・ネマン氏も、労働力配置の最適化が業務の効率化と収益向上に不可欠であると述べています。
このような技術の導入は、ただ効率を追求するだけではなく、従業員の働きやすさや、顧客満足度の向上にも貢献しています。シェイクシャックでは、新しいシステムにより、店舗管理者がスタッフの配置やシフト管理にかける時間を大幅に削減できるため、従業員が顧客サービスにより集中できる環境を提供しています。特にピーク時の混雑対応において、管理者が現場に出て指示を出す必要がなくなり、全体の業務効率が向上しています。
シェイクシャックは、店舗運営の効率化を追求するだけでなく、店舗数の見直しにも着手しています。第2四半期の決算発表で、シェイクシャックは既存店舗売上が4%増加したものの、来店客数は0.8%減少したことを報告しました。また、シアトル、カリフォルニア、テキサス、オハイオにある業績不振の9店舗を閉鎖する決定を下しました。建設以外の理由で店舗を閉鎖するのは、シェイクシャックにとって初めてのことです。リンチ氏は、この決定について「ポートフォリオ管理の一環であり、今後の成長に向けた戦略的な判断」と説明しています。
このような運営上の調整は、将来的な売上成長のための基盤を築くものです。シェイクシャックのようなファストカジュアルチェーンにとって、AIを活用した労働力配置モデルは、効率化だけでなく、顧客体験や従業員の働きやすさを改善する重要な要素となるでしょう。今後も、このような技術革新が業界全体に広がり、さらなる競争が激化することが予想されます。