第536話 【人生100年時代に備える】『LIFE SHIFT』が教える、これからの生き方と働き方の戦略
「人生100年時代」という言葉を聞いたことはありますか?
今や日本でも平均寿命は80歳を超え、2007年に生まれた子どもたちの半数が、なんと107歳まで生きると言われています。そんな超長寿社会において、これまで当たり前とされてきた「教育→仕事→引退」という三段階の人生モデルは、すでに通用しなくなりつつあります。
この新しい人生設計の必読書として話題を集めたのが、リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットによる『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』です。本書は、長寿化によって私たちの人生・働き方・価値観がどう変わるのかを問い、これからの時代に必要な戦略を提示しています。
■ 三段階の人生から「マルチステージの人生」へ
これまでの人生は、
- 教育
- 働く
- 引退
という明確な区切りで構成されていました。しかし、100年生きる前提になると、引退後の生活が30年も続くことになり、老後資金も体力も持たないという現実が見えてきます。
本書はその解決策として、「マルチステージの人生」を提案します。つまり、人生を複数のステージに分け、それぞれの段階で役割・仕事・学び・リセットを繰り返していくという考え方です。
たとえば、30代でキャリアチェンジ、40代で起業、50代で再学習など、柔軟に人生の構造を組み替えることが求められるのです。
■ 無形資産が未来を左右する
『LIFE SHIFT』で強調されるもう一つの重要な視点が、「無形資産」の重要性です。お金(金融資産)だけでは、長い人生を支えることはできません。
では、無形資産とは何か?
- 生産性資産(スキル・知識・キャリア)
- 活力資産(健康・心の安定・友人関係)
- 変身資産(変化に適応する力・アイデンティティ)
この3つが、人生を豊かにする本質的な資産であり、特に「変身資産」は、時代の変化に伴って自分自身を再構築する力として不可欠です。
■ 長寿時代のキャリア戦略とは?
これからの働き方は「一社で定年まで」から、「ポートフォリオキャリア」や「学び直しによる転身」がスタンダードになります。
会社に頼るのではなく、自分自身の価値を高め、柔軟に働き方を設計できる力が求められるのです。
そして、そのためには「ライフロング・ラーニング(生涯学習)」が前提条件になります。学び続け、自分の市場価値を高めていく。これが100年時代における最大のリスクヘッジであり、幸福の土台です。
■ 結婚、家族、住む場所も再設計が必要に
長寿化は、私生活にも大きな影響を与えます。結婚や子育てのタイミング、住まいの選択、パートナーシップの形も見直されるべきです。
たとえば、50代や60代で新たな人間関係を築いたり、70代で新しい趣味やプロジェクトに挑戦することが、人生の「第2、第3の青春」を作る鍵になるのです。
■ まとめ:未来をつくるのは“選択”と“準備”
『LIFE SHIFT』が私たちに問いかけるのは、「人生は長い。だからこそ、どう生きるかを主体的に選び、備えなければならない」というメッセージです。
これまでの常識に縛られず、「自分はどんな人生を送りたいのか?」を問い直し、自らの“無形資産”を育てながら、未来の自分に投資していくこと。それこそが、100年時代を幸せに生き抜くための最善の戦略ではないでしょうか。