第553話 2025年8月 外食産業の最新動向と経営戦略のヒント
―― 実践アドバイス+フランチャイズ化・多店舗展開の視点から
2025年8月の外食産業は、前年同月比108.4%と堅調な伸びを示しました。猛暑が続き、冷たいメニューやビールの需要が高まったほか、お盆の帰省・観光需要が外食市場を後押ししました。台風の影響も少なく、ファミリーレストランや居酒屋を中心に幅広い業態でプラス成長が確認されています。
ここでは業態ごとの動きと、飲食店経営者が活かせる実践アドバイスに加え、今後の フランチャイズ化・多店舗展開の戦略視点 を整理します。
ファーストフード(FF) ― 季節商戦を仕組みに落とし込む
FF全体は売上107.4%。冷たい麺類やアイスの限定商品、キャラクターとのコラボ商品が集客を牽引しました。
実践ヒント
- 「冷たい×短時間提供」の商品を季節定番化。
- コラボ施策は小規模店でも可能。地域企業やご当地キャラと組むのも効果的。
多店舗展開視点
- 季節ごとの「売れる型」を標準化し、各店舗で再現可能なオペレーションにする。
- FC展開では「夏の冷製メニュー企画パッケージ」として加盟店に供給することで、収益構造を安定化できる。
ファミリーレストラン(FR) ― 家族需要を捉えた価格設計
FR全体は109.8%。和風業態が特に好調(112.2%)。価格高騰の中でも「お値打ち感」を演出するメニューが好調要因でした。
実践ヒント
- 大皿料理やセット商品で「家族シェア需要」を狙う。
- 期間限定で「お子様向け特典」を加え、来店のきっかけを作る。
多店舗展開視点
- 店舗ごとに異なる価格戦略ではなく、「標準モデル価格表」を作成し、全国で統一感を持たせる。
- FRは地域差が出やすいため、加盟店支援として「地域価格調整シミュレーション」を本部で提供する仕組みが有効。
居酒屋・パブ業態 ― ビール需要を最大化する仕掛け
飲酒業態は109.1%。猛暑がビール需要を押し上げ、居酒屋も前年を大きく超えました。
実践ヒント
- 「生ビール半額デー」「冷たいおつまみフェア」で来店数を底上げ。
- 団体予約向けには「お盆限定飲み放題プラン」で単価アップ。
多店舗展開視点
- ビール販促の成功事例を「共通販促パッケージ」として仕組み化。
- FC加盟店には「季節別販促カレンダー」を配布し、全店同時プロモーションを実施することでブランド力を強化。
ディナーレストラン ― インバウンドとイベント需要の取り込み
ディナーレストランは110.8%。特に大阪では関西万博の来場者効果が確認されました。
実践ヒント
- インバウンド客対応として、多言語メニューやSNS発信を整備。
- 大型イベント時期には「イベント来場者限定コース」など特別プランを用意。
多店舗展開視点
- 観光地やイベント開催地での出店戦略はFC化の好機。
- 「イベント需要特化型店舗モデル」を開発し、短期回収型の小規模店舗フォーマットとして加盟展開する戦略も有効。
喫茶業態 ― 季節ドリンクで単価アップ
喫茶は110.9%。フラッペやシーズナルドリンクが客単価を押し上げました。
実践ヒント
- 映えるドリンクをSNS販促と組み合わせる。
- フードとドリンクのセット販売で「ついで買い」を狙う。
多店舗展開視点
- 季節ごとの定番ドリンクレシピをマニュアル化し、全国で統一展開。
- 原材料の一括仕入れ体制を本部が構築すれば、加盟店の原価率を安定化できる。
総括:単価戦略から「仕組み化戦略」へ
今回の結果は、猛暑やお盆需要といった一時的要因に支えられた部分もありますが、本質的には「季節商品」「お値打ち感」「イベント需要対応」が売上を押し上げています。
飲食店経営者が今後注力すべきは、これらの成功要因を 「仕組み化」して多店舗展開・フランチャイズモデルに落とし込むこと です。
- 商品企画の標準化:季節商品や販促を毎年繰り返せる「型」にする。
- オペレーションの統一:再現性のあるレシピ・マニュアルを整備。
- 地域対応の柔軟性:本部が分析データを提供し、加盟店が地域特性に応じてアレンジできる仕組みを用意。
まとめ
2025年8月の外食産業は堅調でしたが、客数伸び悩みの課題も残っています。だからこそ、単なる売上対策ではなく、 「再現性あるモデル化」→「多店舗展開」→「FC本部収益化」 という成長の仕組みを整えることが重要です。
繁盛店の成功は偶然ではなく、再現性のある仕組みによって全国に展開できる形に変換していく。これが、これからの飲食経営に求められる次のステージだといえるでしょう。