第555話串カツ田中が狙う「脱・串カツ」戦略――ピソラ買収に見る、外食M&Aの新潮流
外食業界で新たな動きが注目を集めている。
串カツ居酒屋チェーンの「串カツ田中ホールディングス」が、ファミリーレストラン「ピソラ」を買収し、完全子会社化したのだ。
同社はこのM&Aをきっかけに「脱・串カツ田中」を掲げ、将来的には1000店舗体制を目指すという。
■“串カツ一本足”からの脱却
居酒屋市場はコロナ禍以降、夜間需要の回復が鈍く、アルコール中心の業態は頭打ちの傾向が強い。
串カツ田中も例外ではなく、出店余地の限界と人手不足に直面していた。
そこに登場したのが、「郊外型リゾートイタリアン」ピソラである。
ピソラは大阪発のロードサイド型ファミレスで、現在全国に58店舗。
「リゾート気分で本格イタリアンを」というコンセプトのもと、内装や空間づくりに徹底的にこだわり、食べ放題やコース料理で単価3,000〜4,000円を実現する“プチ贅沢型”業態だ。
この買収により串カツ田中は、夜型から昼夜両方で稼げる業態を獲得し、「外食体験の多角化」に踏み出したことになる。
■“中価格帯ファミレス”の苦戦と新潮流
近年、外食市場では消費者の二極化が進んでいる。
「多少高くても良い体験を求める層」と、「安く済ませたい層」。
この中で、ジョナサンやデニーズといった中価格帯ファミレスは苦戦しており、すかいらーくグループでは既に「むさしの森珈琲」や「しゃぶ葉」などへの業態転換が進んでいる。
一方、ピソラのような「近所で楽しめるプチ贅沢」業態は、郊外住民の支持を得て急成長している。
都心の高級レストランに行かなくても、家族や友人と特別な時間を過ごせる――この“体験価値の提供”こそが、外食の新しい成功モデルだ。
■M&Aによる「ブランドポートフォリオ経営」
今回のM&Aの本質は、単なる業態追加ではない。
串カツ田中は「夜の居酒屋」と「昼夜兼用のファミレス」という異なる市場軸を持つブランドを掛け合わせ、時間帯・客層・立地のリスク分散を図った。
つまり、同一企業内で複数フォーマットを展開する「ブランドポートフォリオ経営」への転換だ。
これは、今後の外食企業に求められる方向性でもある。
たとえば、すかいらーくが「ガスト・しゃぶ葉・むさしの森珈琲」を組み合わせて出店余地を広げているように、企業内で多層的な収益モデルを構築することが、成長の鍵となる。
■FC化・多店舗展開への示唆
ピソラの強みは、ロードサイド立地での店舗設計と、体験型業態としての再現性だ。
予約制・セットメニュー・高単価・非日常空間という設計は、マニュアル化・教育体系化がしやすく、フランチャイズ展開にも適したモデルといえる。
今後、串カツ田中グループが「ピソラFC」を展開すれば、地方の外食事業者が新たなブランドで成長できるチャンスも生まれるだろう。
この流れは、私たちFMDIが提唱する「M&A × FC × 多店舗展開の三位一体経営」とまさに重なる。
■外食M&Aの「次の一手」
かつて外食M&Aは「弱った企業の救済」型が中心だった。
しかし現在は、「事業ポートフォリオ強化」や「新業態の取り込み」を目的とする攻めのM&Aが増えている。
今回のピソラ買収も、『再現性のあるロードサイドモデルの獲得』という極めて戦略的な一手だ。
今後は、地方の強い個店や小チェーンを、都市部の企業がM&Aして新たなブランド資産として育てる流れが加速するだろう。
そしてその橋渡しを担うのが、我々のような中小規模M&Aの実務支援である。
■まとめ:M&Aは“多角化の道具”である
串カツ田中のピソラ買収は、外食業の未来像を示す象徴的な事例だ。
単一業態依存から脱却し、複数ブランドで安定経営を図る。
それは今、あらゆる中堅外食企業に求められている戦略でもある。
外食の成長は、もはや「店舗数」ではなく「業態の多様性」で決まる時代。
あなたの会社にも、M&AやFC化を通じた次の成長ステージが必ずある。
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