第556話(米国最新情報)配達ロボットの時代がやってくる?

――アメリカで広がる“無人デリバリー”の新潮流――

アメリカの外食業界で、ロボットによる食事配達が急速に現実のものとなっています。
フードホール型レストランの「ワンダー(Wonder)」は、デリバリー大手のグラブハブ(Grubhub)と、自動運転ロボットメーカー「Avride(アヴライド)」と協力し、ロボット配達の試験運用を始めました。

舞台はニュージャージー州ジャージーシティ。Grubhubアプリからワンダーの料理を注文すると、範囲内の顧客には歩道を走る小型ロボットが料理を届けてくれるという仕組みです。これまでは大学キャンパスなどの限定的な場所で行われていましたが、都市部での一般利用は今回が初めて。ここから全米への展開を目指すといいます。

このロボットはAIで制御され、街中の障害物や悪天候にも対応できる設計。遠隔監視システムを備え、安全性にも配慮されています。運営を担当するAvride社は、UberやAI企業Nebiusから3億7,500万ドル(約560億円)を調達し、急成長中の注目企業です。

一方、ワンダーは“デジタルフードホール”という新しいスタイルの外食チェーン。ひとつの店舗で約30種類の異なるレストランブランドを展開し、アプリを通して好きな料理を組み合わせて注文できるのが特徴です。
これまで「グラブハブが買収した企業」として知られていましたが、今回のロボット導入でさらに利便性を高め、「料理をもっと身近に、もっと便利に」というビジョンを具現化しつつあります。

配達ロボット競争が本格化

今回のワンダーのニュースと前後して、ロボット配達業界全体でも動きが活発化しています。
10月中旬には、エストニア発の「スターシップ・テクノロジーズ(Starship Technologies)」が5,000万ドル(約75億円)を調達。すでに全米の大学キャンパスで1,200台以上のロボットを運用しており、累計配達回数は900万回を突破。今後は大学から都市部へと進出を進める計画です。

また、DoorDashと提携する「Serve Robotics」や、独自の四輪型ロボットを開発する「Coco Robotics」も資金調達を行い、全米での展開を加速しています。
数年前までは実験的だった自動配送ビジネスが、いまや現実的な物流インフラとして定着しつつあるのです。

支持者たちは、ロボット配達によって「早く・安く・環境にやさしい」デリバリーが可能になると語ります。
人件費や燃料費の削減、交通渋滞の緩和、二酸化炭素排出量の低減など、社会的な効果も大きいとされています。

とはいえ、課題も山積み

ただし、ロボット配達がすぐに人間を置き換えるというわけではありません。
舗装の悪い道路、段差、木の根、雪や雨といった悪条件では、まだ完全な自律走行は難しく、実際には遠隔で人がサポートしているケースも多いといいます。
また、新しい技術には常に「安全面」と「規制面」の課題がつきもの。都市部では、歩行者や自転車との共存ルール作りが急務です。

それでも、需要は確実に高まっています。
コロナ禍以降、デリバリー市場は拡大を続け、消費者は「早く・簡単に・非接触で」食事を受け取ることを当たり前のように求めるようになりました。
その期待に応えるため、テクノロジー企業と外食チェーンの連携が進み、街の風景そのものが少しずつ変わり始めています。

食の未来は“自動で届く”

「レストラン=人が行く場所」から、「食が自動で届くサービス」へ。
この流れは、単なる便利さを追求したトレンドではなく、外食産業の構造そのものを変えつつあります。

お腹が空いたら、アプリで注文し、10分後には小さなロボットが玄関前に料理を届けてくれる――。
そんな未来は、もうすぐそこまで来ています。

技術と食文化が融合する新しい時代。
ロボットが運ぶのは、単なる“料理”ではなく、“食の体験”そのものになっていくのかもしれません。

 

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