第565話 2025年、飲食業界は何が起きていたのか?

――逆風の時代に「生き残った店」に共通するものとは

2025年の日本の飲食業界は、ひと言で表すなら「選別の一年」だったと言えます。人手不足、原材料費や光熱費の高騰、最低賃金の引き上げといった複合的なコスト増が重なり、経営体力の乏しい店舗を中心に倒産や閉店が相次ぎました。一方で、同じ環境下でも連日満席を続ける店や、むしろ出店を進める店も存在しました。この差はどこから生まれたのでしょうか。2025年の動向を振り返ることで、その要因が見えてきます。

まず2025年に顕著だったのが、「異分野ミックス型のネオ専門店」の台頭です。単なる専門店ではなく、「点心×ワイン」「中華×ジビエ」「焼酎×創作料理」など、一見すると結びつかない要素を掛け合わせた業態が注目を集めました。これは、何でも揃う総合型の店よりも、“刺さる人に深く刺さる”マイクロ・ニッチ戦略が有効になったことを示しています。客数は多くなくても、熱量の高いファンに支えられる店が、結果として安定経営を実現しているのです。

次に重要なポイントが、「高効率・小型店舗モデル」の広がりです。家賃や人件費の上昇に対応するため、立ち飲みや数坪規模の小型店舗で、高回転・高粗利を狙うモデルが増えました。重要なのは「小さいこと」そのものではなく、「オペレーションが合理的に設計されていること」です。メニュー数を絞り、調理工程を単純化し、少人数、あるいはワンオペでも回せる体制を構築する。こうした店舗では、坪月商70万〜100万円超も珍しくなく、従来の大型店とは異なる“勝ち方”が明確になった一年でした。

また、営業時間の再設計も2025年の大きなテーマです。昼と夜で業態を変える「二毛作営業」や、朝営業・昼飲みなど、アイドルタイムを埋める工夫が進みました。ここで重要なのは、「長く営業すること」ではなく、「稼げる時間帯に集中すること」です。人手不足の中で無理な長時間営業を続けるよりも、戦略的に営業時間を絞り、収益性とスタッフ定着を両立させる判断をする店舗が増えています。

さらに見逃せないのが、DX(デジタル活用)と省人化の進展です。モバイルオーダー、セルフレジ、発注やシフト管理の自動化などは、大手チェーンだけでなく個人店にも広がりました。DXの本質は、最新技術を導入すること自体ではありません。人がやらなくてもよい仕事を減らし、人にしかできない価値提供に集中することにあります。この考え方を理解している店舗ほど、少人数でも安定した運営を実現しています。

では、2026年に向けて何が問われるのでしょうか。キーワードは明確です。
それは、「どの土俵で戦うのかを決めきること」です。
超効率型で数字を取りに行くのか、属人的でもファンに深く愛される店を目指すのか。中途半端なポジションは、これからますます厳しくなっていくでしょう。

2025年は厳しい一年でしたが、同時に飲食店経営の本質が浮き彫りになった一年でもありました。規模ではなく設計、流行ではなく思想、客数ではなく関係性。こうした視点を持つことが、2026年以降を生き抜くための大きなヒントになるはずです。

 

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