第593話加盟店を100社集めるより、10社の複数店オーナーを育てる
Qdobaの拡大戦略に学ぶ、これからのFC本部経営
米国のファストカジュアル・メキシカンチェーン、Qdobaが積極的な拡大戦略を進めています。
Qdobaは現在約865店舗を展開しており、今後8年間で約2,000店舗規模まで拡大する計画を掲げています。さらに、年間100店舗の新規出店を目標にしていると報じられています。注目すべきは、その拡大を誰が担うのかという点です。
報道によれば、Qdobaの新規出店を担うのは、元マクドナルド加盟店や、すでに複数店舗を運営している外食オペレーターです。つまり、まったくの新規加盟希望者を大量に集めるのではなく、店舗運営の経験があり、複数店展開の力を持つオーナーと組んで成長しようとしているのです。
この動きは、日本のFC本部にとって非常に重要な示唆を持っています。
日本でFC化を考える企業の多くは、まず「加盟店を何社集めるか」に目が向きます。説明会を開く、LPを作る、広告を出す、加盟希望者を集める。もちろん加盟開発は必要です。しかし、FC本部の健全な成長を考えたとき、本当に重要なのは新規加盟店の数だけではありません。
むしろ、既存加盟店が2号店、3号店を出せる状態になっているかどうかです。
1号店でしっかり利益が出ている。
店長が育っている。
オーナーが本部を信頼している。
オペレーションが安定している。
資金繰りに無理がない。
次の出店を前向きに考えられる。
この状態ができて初めて、FC本部としての成長は健全なものになります。
一方で、新規加盟店ばかりを増やし続けるモデルには注意が必要です。新しい加盟店を獲得するには、広告費、営業人員、説明会運営、個別面談、契約対応、研修、開業支援など、多くのコストがかかります。さらに、加盟者の経験値が低ければ、開業後の支援負担も大きくなります。
加盟店数は増えているのに、本部が疲弊している。
開業支援に追われて、既存店支援が手薄になる。
不振加盟店が増え、SVが火消しに回る。
新規加盟金は入るが、継続的なロイヤリティが安定しない。
こうした状態は、健全なFC本部経営とは言えません。
FC本部が本当に目指すべきなのは、加盟店を「集める」ことではなく、加盟店を「育てる」ことです。特に重要なのは、複数店オーナーを育成する視点です。
複数店オーナーとは、単に資金力のある加盟店ではありません。1店舗目を成功させ、その成功要因を理解し、人材を育て、店長を任命し、2店舗目以降も安定して運営できる加盟店です。本部にとって、このようなオーナーは非常に重要なパートナーになります。
なぜなら、複数店オーナーはブランドの成長スピードを高めるだけでなく、本部運営の安定にも貢献するからです。1社が3店舗、5店舗、10店舗と展開できれば、本部は毎回ゼロから加盟者を教育する必要がありません。ブランド理解があり、本部との信頼関係があり、既に運営ノウハウを持つ加盟店が次の店舗を担うため、出店の成功確率も高まりやすくなります。
ただし、ここで注意すべき点もあります。
大型オーナーに依存しすぎると、本部と加盟店の力関係が偏る可能性があります。特定の加盟企業が多くの店舗を持つと、本部への交渉力が強まりすぎることがあります。また、その加盟企業が経営不振に陥った場合、複数店舗が一度に影響を受け、ブランド全体のリスクになることもあります。
したがって、FC本部に必要なのは、単に大きな加盟店を探すことではありません。
健全な複数店オーナーを計画的に育てることです。
そのためには、まず1店舗目の収益モデルが明確でなければなりません。加盟店が2号店を出したくなる最大の理由は、1号店で利益が残ることです。初期投資、原価、人件費、ロイヤリティ、販促費を差し引いても、加盟店に納得できる利益が残る設計になっているか。本部はここを徹底的に確認する必要があります。
次に、店長育成の仕組みが必要です。複数店展開では、オーナーが全店舗を直接見ることはできません。2号店、3号店を任せられる店長が育っていなければ、店舗数を増やすほど品質が落ちます。つまり、複数店オーナー育成とは、実は店長育成の仕組みづくりでもあります。
さらに、SVによる支援体制も欠かせません。店舗数が増えた加盟店ほど、数字管理、QSC、スタッフ教育、店舗間のばらつき管理が重要になります。本部のSVが単なるチェック係ではなく、加盟店の経営改善を支援できる存在でなければなりません。
これからのFC本部は、加盟店募集数を誇るだけでは不十分です。
大切なのは、既存加盟店が追加出店したくなる本部かどうかです。
加盟店が2店舗目を出せるほど、1店舗目が成功しているか。
加盟店が人を育てられるよう、本部が教育の仕組みを持っているか。
複数店展開しても品質が崩れないよう、SV体制が整っているか。
特定の大型加盟店に依存しすぎないよう、加盟店ポートフォリオを管理しているか。
Qdobaの拡大戦略は、日本のFC本部にこう問いかけています。
加盟店を増やすことが目的になっていないか。
既存加盟店が、次の店舗を出したくなるほど成功しているか。
本部は、加盟店を募集する会社ではなく、加盟店を成長させる会社になっているか。
これから評価されるFC本部は、加盟店を100社集める本部ではありません。
10社の優良加盟店を育て、その加盟店が2店舗、3店舗、5店舗と健全に成長できる仕組みを持つ本部です。
FCビジネスの本質は、加盟店数の拡大ではなく、加盟店成功の再現です。
その意味で、これからのFC本部に必要なのは、派手な加盟開発力ではなく、加盟店を複数店オーナーへ育てる力なのです。
