第602話 消費税率が違えば、店内と持ち帰りは別事業になる
「外食10%、テイクアウト1%時代に本部が準備すべきこと」
外食業界にとって、消費税率の変更は単なるレジ設定の問題ではありません。場合によっては、店舗のビジネスモデルそのものを見直す必要があります。
日本フードサービス協会は2026年9月10日、政府が検討する飲食料品の消費税減税について、店内飲食との税率差が客離れや店舗の混乱を招く可能性があるとして、対策を要請しました。報道されている案では、2027年4月から飲食料品とテイクアウトを1%に引き下げる一方、店内飲食は10%に据え置かれます。
実施されれば、現在2%ある税率差が9%に広がります。同じ料理でも、店内で食べるか持ち帰るかによって支払額に大きな差が生まれるのです。
例えば税抜1,000円の商品は、店内なら1,100円、持ち帰りなら1,010円となります。二人分なら180円、家族四人分なら360円の差です。物価高が続くなか、この差が利用方法の選択に影響する可能性は否定できません。
ここで経営者が考えるべきことは、「テイクアウトを増やせばよい」という単純な話ではありません。
店内飲食とテイクアウトは、同じ商品を販売していても必要な仕組みが違います。店内では席数、回転率、接客、滞在時間が重要です。一方、テイクアウトでは包材、予約受付、受け渡し時間、持ち帰った後の品質、注文集中時の厨房能力が重要になります。
つまり、店内と持ち帰りは別事業として設計しなければなりません。
まず見直すべきは商品です。店内商品をそのまま容器に入れても、時間の経過によって味や食感が落ちれば、ブランドへの評価まで下がります。持ち帰りに適した商品を選び、調理から30分後、60分後の品質を確認する必要があります。
次に確認するのは利益です。テイクアウトは客席を使わないため効率がよく見えますが、容器代、袋代、決済手数料、追加作業が発生します。売上ではなく、食材原価と包材費、追加人件費を差し引いた限界利益で判断すべきです。
さらに、受け渡しの導線も重要です。昼のピークに店内注文と持ち帰り注文が同時に集中すると、料理提供が遅れ、店内客の満足度を下げる恐れがあります。テイクアウト売上が増えても、既存客が離れてしまえば本末転倒です。
多店舗企業やFC本部では、店舗任せにしてはいけません。対象商品、価格表示、注文受付、POS設定、会計処理、包材、クレーム対応まで標準化する必要があります。加盟店ごとに対応が違えば、顧客の混乱や税務上のミスにつながる可能性があります。
ただし、報道されている税率変更は現時点で確定した制度ではありません。税率や開始時期、対象品目が変わる可能性もあります。今すぐ全店を改装する段階ではありませんが、何も準備しなくてよいという意味でもありません。
まず直営店一店舗で、持ち帰り専用商品を限定して販売し、商品別粗利益、包材費、追加人時、受け渡し時間、店内提供への影響を測ることです。
制度が決まってから慌てて対応する本部と、複数のシナリオを想定して実験している本部では、大きな差が生まれます。消費税率の違いを会計上の問題で終わらせず、顧客の利用方法が変わる経営課題として捉えるべきです。
参考:食品産業新聞社「外食10%、飲食料品1%で税率差9%に」2026年9月11日
