第603話 FC本部の仕事は、トップ店舗を作ることではなく、下位店舗を底上げすること
FC本部や多店舗企業の会議では、よく「平均売上」という数字が使われます。
平均月商1,000万円。
平均客単価1,200円。
平均原価率32%。
平均営業利益率10%。
もちろん、平均値を見ることは必要です。全体の傾向を把握するうえでは重要な数字です。しかし、FC本部が平均値だけを見ていると、現場で起きている本当の問題を見落とす危険があります。
米国のPapa Johnsでは、再建策の一環として「Brand Standard Coaches」を導入し、店舗現場で従業員教育を行っています。注目すべきは、上位店舗と下位店舗のパフォーマンスに約400ベーシスポイントの差があり、そのギャップを縮めようとしている点です。
これは日本のFC本部にとっても非常に重要な示唆です。
たとえば、100店舗あるFCチェーンの平均月商が1,000万円だったとします。一見すると、悪くない数字に見えるかもしれません。しかし内訳を見ると、上位20店舗は1,400万円、中位60店舗は1,000万円、下位20店舗は600万円だったとしたらどうでしょうか。
平均だけを見れば「全体としては順調」と判断してしまうかもしれません。
しかし実際には、下位20店舗が大きな課題を抱えている可能性があります。
この場合、本部が最優先で取り組むべきことは、新規加盟店を増やすことではないかもしれません。むしろ、下位店舗の売上、利益、QSC、店長力、スタッフ教育、地域販促を改善することの方が、ブランド全体にとって重要です。
FC本部の価値は、成功店を作れることだけではありません。失敗店を減らせることにもあります。
トップ店舗は、立地が良い、オーナーの能力が高い、店長が優秀、スタッフが定着している、地域で認知されているなど、さまざまな要因で高い実績を出している場合があります。もちろん、その成功要因を分析し、他店舗に共有することは重要です。
しかし、トップ店舗の成功事例を共有するだけでは、下位店舗は改善しません。
なぜなら、下位店舗には下位店舗なりの原因があるからです。
商品品質が安定していないのか。
接客レベルが低いのか。
清掃状態に問題があるのか。
提供時間が遅いのか。
原価管理が甘いのか。
店長が数字を見られていないのか。
スタッフ教育が回っていないのか。
商圏への販促が不足しているのか。
この原因を特定しないまま、「上位店舗のように頑張りましょう」と言っても改善にはつながりません。
ここで重要になるのがSVの役割です。
SVは単なる巡回担当ではありません。店舗の数字と現場を見て、課題を発見し、改善策を店長と一緒に実行する存在です。特に下位店舗に対しては、チェックではなく伴走が必要です。
下位店舗の店長は、何が悪いのかを自分で整理できていないことがあります。売上が低いことは分かっていても、客数が少ないのか、客単価が低いのか、リピートが弱いのか、ピーク時間帯で取りこぼしているのかまでは分解できていない場合があります。
だからこそ本部は、下位店舗を責めるのではなく、改善できる状態に導く必要があります。
まず見るべきは、売上だけではありません。客数、客単価、営業利益、原価率、人件費率、口コミ評価、QSCチェック、スタッフ定着率、店長の行動量などを総合的に見る必要があります。
次に、上位店舗と下位店舗の違いを明確にします。
同じ商品を扱っているのに、なぜ差が出るのか。
同じ看板なのに、なぜ再来店率が違うのか。
同じマニュアルなのに、なぜ提供スピードが違うのか。
同じ販促を行っているのに、なぜ反応が違うのか。
この差を見える化することが、本部の重要な仕事です。
FC本部が本当に強くなるためには、「平均店舗売上」だけでなく、「上位店舗と下位店舗の差」を定期的に確認する必要があります。上位25%と下位25%の売上差、利益差、QSC差、口コミ差、スタッフ定着率の差を見る。そこから、どの差が成果に最も影響しているのかを分析する。
そうすると、本部がやるべきことが見えてきます。
新商品を出すことなのか。
価格を見直すことなのか。
店長教育を強化することなのか。
SVの巡回基準を変えることなのか。
加盟店研修を見直すことなのか。
不振店専用の改善プログラムを作ることなのか。
平均値だけを見ていては、この判断はできません。
多店舗展開やFCビジネスでは、店舗数が増えるほど店舗間格差が広がります。最初の数店舗は本部の目が届きます。しかし、20店舗、50店舗、100店舗になると、すべての店舗を同じように管理することは難しくなります。
だからこそ、本部は店舗を分類する必要があります。
伸ばす店舗。
維持する店舗。
改善すべき店舗。
撤退を検討すべき店舗。
すべての店舗に同じ支援をするのではなく、店舗の状態に応じて支援内容を変えることが必要です。
FC本部の仕事は、トップ店舗を褒めることだけではありません。下位店舗を放置しないことです。下位店舗が改善すれば、加盟店の利益が増えます。加盟店の満足度が上がります。契約更新率が高まります。追加出店の可能性も出てきます。そしてブランド全体の評価も安定します。
逆に、下位店舗を放置すれば、加盟店不満、品質低下、口コミ悪化、閉店、訴訟リスクへつながる可能性があります。下位店舗の問題は、その店舗だけの問題ではありません。ブランド全体の信頼に関わる問題です。
これからのFC本部が見るべき数字は、平均値だけではありません。
上位店と下位店の差。
その差がなぜ生まれているのか。
その差を縮めるために本部は何を支援するのか。
ここまで見て初めて、FC本部は本当の意味で加盟店を支援していると言えます。
FC本部の価値は、成功店を作れることだけではありません。
失敗店を減らし、下位店舗を底上げし、加盟店全体の成功確率を高めることです。
平均売上が良いから安心するのではなく、下位店舗がなぜ苦戦しているのかを見る。
トップ店舗を増やす前に、失敗店舗を減らす。
店舗数を増やす前に、既存店舗の格差を縮める。
これこそが、これからのFC本部に求められる本当の仕事ではないでしょうか。
