第609話 外食売上7.3%増の裏側――客数が増えない店に、次の成長はあるのでしょうか?
2026年9月の外食市場から読み解く、これからの店舗経営
日本フードサービス協会が発表した2026年9月の外食産業市場動向調査によると、外食全体の売上高は前年同月比107.3%となりました。
一見すると、外食市場は順調に成長しているように見えます。
しかし、その内訳を確認すると、少し違う景色が見えてきます。
売上高107.3%に対して、客数は102.3%、客単価は104.9%、店舗数は101.2%でした。
つまり、今回の売上成長は、客数の増加だけでなく、客単価の上昇によって大きく支えられていることが分かります。
売上が増えていることと、お客様から選ばれる力が強くなっていることは、必ずしも同じではありません。
ここに、これからの外食経営を考える重要な視点があります。
1.同じ売上増でも、業態によって中身が違います
業態別に見ると、ファーストフードは売上109.7%、客数103.4%、客単価106.1%と、比較的力強い成長を示しました。
特に洋風ファーストフードは売上113.1%、客数105.8%と好調でした。
秋の定番となった「月見」商品などの季節限定メニューが、広告宣伝と連動して集客に貢献したと考えられます。
注目したいのは、単に値上げをしているのではなく、お客様が来店したくなる理由を継続的につくっていることです。
一方、ファミリーレストランは売上103.9%に対して客数100.7%、居酒屋は売上100.9%に対して客数99.3%と、客数の伸び悩みが見られます。
同じ外食産業でも、成長の質には明確な違いが生まれていることが分かります。
2.喫茶業態に見る、客単価依存の危うさ
今回、特に気になったのが喫茶業態です。
売上は103.0%と前年を上回りましたが、客数は95.6%と4.4%減少しています。一方、客単価は107.7%まで上昇しました。
売上だけを見れば増収ですが、来店客数は減っています。
もちろん、9月は長雨や台風などの天候要因があり、この1か月だけで顧客離れが進んだと判断することはできません。
しかし、価格改定によって売上を維持する経営には、注意が必要です。
仮に客単価が上昇しても、来店頻度が下がり続ければ、将来の売上基盤は弱くなる可能性があります。
重要なのは、値上げの是非ではありません。
値上げ後も、お客様が継続して利用したいと思える価値を提供できているかどうかです。
3.多店舗経営では「全店売上」と「既存店の実力」を分けて考える必要があります
今回の調査は、新規出店を含めた全店売上の前年同月比です。
外食全体の店舗数は101.2%、売上高は107.3%でした。
ここで多店舗経営者が注意すべきなのは、全店売上の増加を、そのまま既存店の成長と評価しないことです。
新規出店が売上を押し上げている可能性もあり、個々の既存店舗の競争力まで、この数字だけで判断することはできません。
特にFCビジネスでは、本部の店舗数やチェーン売上が伸びても、加盟店の利益が増えているとは限りません。
原材料費、人件費、家賃などのコスト上昇によって、増収でも減益になる可能性があるからです。
FC本部が確認すべきなのは、店舗数やチェーン売上だけではありません。
既存店売上、客数、客単価、営業利益、そして加盟店の投資回収状況まで含めた経営の健全性を確認することが重要です。
4.これからの成長を決めるのは「来店理由」をつくる力です
9月は天候不順というマイナス要因があった一方、大型連休や季節限定商品が売上を下支えしました。
この結果から考えたいのは、価格以外でお客様の来店を促す仕組みの重要性です。
季節商品、利用シーンに合わせたメニュー、地域性を取り込んだ企画、再来店を促進する仕組みなど、取り組むべき施策は数多くあります。
ただし、一時的な販促で売上が伸びるだけでは十分ではありません。
大切なのは、その取り組みが再現可能であり、他店舗でも実行できることです。
これは、多店舗展開やFC化における基本原則でもあります。
成功店舗の店長個人の能力だけに依存した集客では、店舗数が増えたときに再現することが難しくなります。
本部が果たすべき役割は、お客様に選ばれる理由を、仕組みとして全店舗に展開することです。
5.売上成長の先に、何を目指すべきでしょうか?
2026年9月の外食市場は、売上高107.3%という堅調な結果となりました。
しかし、その数字を額面通りに受け取るだけでは、経営判断を誤る可能性があります。
見るべきなのは、どのように売上が増えたのか、客数は増えているのか、利益は残っているのか、そしてお客様は再び来店しているのかということです。
価格を上げることは、経営を守るための重要な選択肢です。
しかし、価格改定だけに依存する成長には限界があります。
これからの外食経営で問われるのは、「いくら売れたか」以上に「なぜお客様に選ばれたのか」ということです。
その答えを数字と現場の両方から見つけ、再現できる仕組みに変えていくことが、多店舗経営とFC本部の持続的な成長につながると考えます。
まず取り組みたいのは、既存店の客数を前年同月比だけでなく、直近12か月の推移で確認することです。
一時的な天候要因による変動なのか、継続的な顧客離れが起きているのかを見極めることで、値上げ、商品開発、販促、出店などの経営判断を、より的確に行うことができます。
売上の数字だけに一喜一憂するのではなく、その数字の背景にあるお客様の行動を読み解くことが、これからの外食経営には求められているのではないでしょうか。
出典: 一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 2026年9月度 結果報告」
https://www.jfnet.or.jp/wp/wp-content/uploads/2026/10/getujidata-2026-9.pdf
