第308話 外食のパート・アルバイト30万人はどこに消えたのか?
2021年の年があけて再び緊急事態宣言が発令されて大きな打撃を受けている外食だが、ここにきてランチの自粛まで言われ始めて営業自体が難しくなった店舗が急増している。そして看板を下ろす店舗が見受けられる。渋谷の一等地の10階建てのビルの4フロアーが開いたままになっている。休業ではなく撤退だ。私の事務所のある赤坂界隈でもどんどんと閉店している。その後に入る気配は見れない。
そんな中、外食のパート、アルバイトが30万人減少しているとの報告が日経ビジネスに載っていた。
帝国データバンクによると、20年に負債1000万円以上で法的整理をした飲食業は780社と過去最多だ。「負債がない状態で廃業する店を含めればもっと多い」(同社)といい、多くの人が職を失った。営業が続いていても、時短や売り上げ減で働ける時間が減り、手取りも減って職場を替える人もいる。職場に残っているものの、シフトの調整で勤務時間の減少を余儀なくされるアルバイトも多い。
このままでは雇用の維持が困難になるという外食業界が恐れている事態に声をあげる外食経営者も多い。外食はパート・アルバイトを中心に店舗での雇用者数が大きい。総務省の調査によると、飲食店の従事者数は2020年10月で398万人。近年は430万人前後で推移してきたが、20年3月以降に急減した。
減った外食の従業員はどこに行ったのだろうか。「飲食店で働いた経験者が別業界の働き口を探すと小売りに向かう傾向がある」(マイナビアルバイトリサーチ課の松田美貴氏)。実際、小売りでは長年の過度な人手不足が好転しつつある。ローソンの自社サイトを通したアルバイトの応募数は、20年4月に前年同月比2.8倍となり、その後も同1.4~1.8倍と高水準の応募が続く。ファミリーマートも同様だ。
スギ薬局を運営するスギホールディングスは新規出店に伴い、20年4月からの9カ月間でアルバイトが約4000人増えた。21年2月期に45店舗を出店するニトリホールディングスは「マニュアルがあるので他業界から来ても即戦力になる」という。
外食から消えたパートやアルバイトの雇用を、コロナ禍で業績を落としていない小売業が支える構図がうかがえる。ただ、それがいつまでも続く保証があるわけではない。パートタイムの有効求人倍率は19年11月に1.72倍だったが、20年11月には1.13倍となった。小売りで職に就いたパート・アルバイトが簡単にやめるとは考えにくい。この間に長年の人手不足を解消した小売りもあり、採用には一服感が出始める。
400万人弱が働く飲食店の従事者は、サービス業の中で道路貨物運送業(204万人)や宿泊業(64万人)などに比べても多い。外食の雇用が悪化すれば、溢れた従業員はほかの業界に向かう。時短要請に応じる外食が持ちこたえられなければ、日本全体の雇用に及ぼす影響が大きくなる。
と日経ビジネスが伝えている。
雇用が維持できないのは業界としては非常に重要な問題となって、アフターコロナにのしかかってくる。
熟練された人材が、他の業界から簡単に戻ることは考えにくい。
一方で、体力のある企業はこの機会に採用を強化し、優秀な人材をかき集めている。
業態変更も実施しながら、今後の拡大を模索して動いている企業も見かけるのも事実である。生き残れた企業がより大きく飛躍できる機会となるのだろうか。