第371話 企業倒産低水準の怪
2021年度の国内倒産件数が57年ぶりの低水準であったことが東京商工リサーチから発表になった。
コロナ禍で企業は大きな打撃を受けてさぞ倒産件数は増えたのではと思えたが結果は5980件と1964年に次ぐ低水準だった様だ。その様子が日経web版に載っていたので抜粋してご紹介したい。
企業の倒産が歴史的に少なくなっている。東京商工リサーチが8日発表した2021年度の倒産件数は5980件で、1964年度の4931件に次ぐ57年ぶりの低水準だった。新型コロナウイルス禍に対応した資金繰り支援策で、返済能力が低い会社の倒産まで抑え込んだ側面が大きい。原材料高などが懸念材料で、倒産が一転して増える可能性はある。
倒産は新型コロナの打撃が大きかった業種も含め全般的に減っている。飲食業の倒産件数は22%減の612件、宿泊業は44%減の71件だった。運輸業は7%増の244件と2年ぶりに前年度を上回ったものの、低水準に抑えられている。
倒産が減ったのは政府主導の資金繰り支援によるところが大きい。新型コロナで売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資する「ゼロゼロ融資」の実行額は20年から21年末までで約42兆円にのぼった。金融機関も返済猶予(リスケ)に積極的に応じて、倒産を食い止めてきた。
もっとも、先行きについて東京商工リサーチは「企業倒産は夏場にかけて底打ちから緩やかな増勢をたどる可能性が高い」と指摘する。
懸念材料の一つに、借入金の返済がある。ゼロゼロ融資の元本据え置き期間は1~2年が多いとされ、今春ごろから返済が本格化しているもようだ。前倒しで返済に取り組む企業がある半面、業績改善が遅れている企業も多く、元本返済が資金繰りを圧迫しかねない。
急速に進んだ円安や、それに伴うエネルギーや原材料の価格高騰も経営に悪影響を及ぼす。ロシアによるウクライナ侵攻に伴う小麦や原油、天然ガスなどの供給不足も懸念される。帝国データバンクが3月に全国2万4000社へ実施したアンケート調査によると、ウクライナ情勢が自社にマイナスの影響があるとの回答が50%を占めた。
中小企業の資金繰りを支えてきたゼロゼロ融資の申請期限は変異ウイルスの拡大を受けて3月末から6月に延長された。困っている中小企業は存在するが、同時に数々の補助金が出ていることもあり「一口に中小企業と、くくりにくい状況になっている」(金融庁幹部)。
実際に足元では倒産増加の兆候が出始めている。東京商工リサーチの集計では、3月単月の倒産件数は593件と前年同月比6%減ったものの、このうち新型コロナの影響で倒産した「コロナ関連倒産」は205件で、20年の集計開始以来、初めて200件を超えた。
ゼロゼロ融資は中小の負担を減らす利点がある一方、金融による規律が働かなくなり「事業者側の経営に緩みが生じる」との懸念がくすぶる。経済的混乱を避けながら、スムーズに負債圧縮や事業再生に取り組めるかが今後の焦点となる。
コロナ禍での企業支援施策が今後にどう影響をするのか注視して行きたい。