第460話 ペッパー前社長、81歳の創業 

一時代を風靡したいきなりステーキの一瀬社長が新たなビジネスに挑む。そんな姿を日経新聞が伝えています。

ペッパーフードサービス創業者の一瀬邦夫氏がこのほど、和牛ステーキの店をオープンさせた。51歳で「ペッパーランチ」、71歳で「いきなり!ステーキ」を立ち上げ、米国産牛を割安価格で提供してきた一瀬氏。81歳での挑戦は、和牛で消費者の胃袋をつかむ戦略だ。

「和牛ステーキ和邦(わくに)」は11月20日に両国駅近くにオープンした。ペッパーフードの「ステーキくに」があった場所だ。メニューは和牛サーロインステーキ(200グラム3300円)や和牛ヒレステーキ(同7040円)、米沢牛サーロインステーキ(同5500円)など。昼は焼き牛丼やカレーなどを提供する。

一瀬氏は、51歳でペッパーランチを創業し、マザーズ上場を果たした。その後、従業員による暴行事件や食中毒で業績は悪化したが、2013年に71歳で「いきなり!ステーキ」を始めると大ヒット。わずか6年で500店近くを展開。米国にも出店してナスダックに上場した。

 

「和牛ステーキ和邦」を両国駅近くにオープンした

18年には東京都品川区の店で24時間でビーフステーキを1734食提供し、ギネス世界記録を達成している。19年には、年間9000トン以上の米国産牛を利用する日本最大の米国産ビーフステーキ・カット・ユーザーとして米日農産物貿易の殿堂入り(HOF)も果たした。米国産牛を使ったメニューを割安な価格で提供してきたのが一瀬氏のビジネスだった。

だが大量出店が裏目に出て19年12月期には27億円の最終赤字に。「ペッパーランチ」事業は投資ファンドに売却し、22年8月に業績不振の責任をとる形で社長を辞任した。

1年強の休養を経て今回挑戦するのは和牛だ。実は40年近く前にも「和邦」の名で米沢牛を使ったステーキ店を手掛けたことがある。客単価1万5千円で利益は出たものの、本店の経営が悪化するなどしたため断念した。近年は円安や米国産牛の需要増などを背景に米国産牛の割安感は薄れている。

一方でこれまでなら高すぎて扱いにくかった和牛が手ごろな価格で提供できるようになってきた。「『いきなり!ステーキ』によってステーキ文化が日本に定着したこともあり、今度はおいしい和牛を手ごろな価格で提供することにした」と説明する。

有限会社ケーアイを立ち上げると、一瀬氏を慕って社員が4人集まった。「彼らに経営を託せるようになるまでの仕組み作りが自分の役割」と心得る。時給1700円で優秀なスタッフを集め、一からのスタートだ。「店の設計から、送られてきた請求書の振り込みまで全て自分でやるから大変」といいつつも表情は明るい。

ランチタイムでは国産牛150グラムのステーキ定食を2530円で提供するが、頻繁に通える金額ではない。幅広い客層を取り込む仕掛けが必要だ。独創性が持ち味だけに、これまでの成功体験を含めていくつかのアイデアはある。早速、ワゴンに肉をのせて客席まで運び、客の求める厚さに切って提供するオーダーカットサービスを始めた。会費制のイベントも検討中だ。3回目のヒットを生み出せるのか、注目したい。

(引用:日経新聞 編集委員 中村奈都子)

 

FMDIフードビジネス多店舗展開研究所の最新情報をお届けします

コメントを残す