第472話 野放しのフランチャイズパッケージ:日本への定番移住手段
弁護士法人淀屋橋・山上合同の国際弁護士、増山健氏が解説する。
インバウンド(訪日外国人客)需要や海外からの資金流入に伴い、増えているトラブル相談の一つに、フランチャイズパッケージに関する紛争がある。これは日本のフランチャイズチェーンの本部と外国人加盟者との間で生じる問題だ。
一般的な問題は、外国人がフランチャイズに加盟して店舗を開業したが、本部からの十分な支援が得られなかったり、収益が期待以下であったり、店舗を閉鎖しようとすると法外な違約金を請求されることである。
過去には、フランチャイズ本部の怠慢により店舗を開業できなかったため、契約解除となり、外国人が違約金を支払う事例もあった。
「外国人が日本のフランチャイズチェーンに加盟して店舗を運営」と聞くと不思議に思うかもしれないが、これは実は一般的な事業形態である。特に中華圏の外国人にとって、日本への移住手段として定番化している。
日本では、単なる移住や投資目的でのビザ取得は難しい。家族が日本人でない限り、就労先を見つけるか、自ら実態のある事業を始める必要があるが、言語能力や給与水準から見て、就労先を見つけるのは難しい。
そこで、多くの外国人が、日本で起業し、ビザを取得しようとするが、地縁のない外国人が日本で起業するのは難しい。そこで、フランチャイズパッケージと組み合わせて外国人の移住を支援する形態が出現する。
これに興味を持った移住希望者は、日本のフランチャイズ本部と加盟契約を結ぶ。店舗の種類はさまざまだが、主に小規模な飲食関連業種が多い。店舗の場所や設備は基本的に本部が提供し、開店のめどが立ったら、行政書士事務所などが会社設立からビザ取得までを代行する。
このパッケージ自体は合法であり、成功例もあるが、ビジネス経験が乏しい移住希望者や、日本のビジネス環境について知識が不十分なことが問題となる。不十分な説明や一方的な契約書がトラブルの原因となることもあり、移住希望者が不利益を被ることもある。
フランチャイズ契約はパワーバランスの違いから不平等な契約が結ばれやすいため、公正取引委員会も関連ガイドラインを策定している。
しかし、移住を目的としたフランチャイズパッケージについては、外国人特有の事項も考慮する必要がある。トラブルの防止と解決に向けた対策が必要である。
引用:産経新聞