第537話 飲食・サービス業で急拡大!「スモールM&A」が事業承継の新常識に

近年、飲食業・サービス業における「スモールM&A(小規模M&A)」が急速に活況を呈しています。
かつては大企業同士の大型M&Aが話題の中心でしたが、今は年商数千万円〜数億円規模の中小規模事業でも売買事例が急増しています。特に飲食・サービス業界においては、この動きが顕著になっています。

なぜ今スモールM&Aが盛り上がっているのか?

背景にはいくつかの要因があります。

経営者の高齢化と後継者不足

飲食店・美容室・介護・クリニック・小売店など、店舗型ビジネスの多くはオーナー経営が中心です。しかし、団塊世代〜団塊ジュニア世代の経営者が引退期を迎え、**「事業は黒字だが後継者がいない」**というケースが急増しています。

これまでであれば、閉店や廃業が選択肢になりがちでしたが、**「誰かに事業を引き継いでほしい」**というニーズが高まり、M&A市場に案件が流入しています。

買い手側の成長戦略が変化

一方、買い手側の状況も変わっています。
新規出店に比べて、既存店の買収は立地や人材・売上実績などが既に整っているため、初期投資・リスクを抑えたスピード拡大が可能です。

特にフランチャイズ本部、地域密着の中堅企業、投資ファンド、個人投資家(サーチファンド)などがスモールM&Aに積極的に参入し始めています。

③ M&Aプラットフォームの普及

「TRANBI」「BATONZ」「M&A総合研究所」などのオンラインM&Aマッチングサービスの登場により、事業売買が以前よりも身近になりました。
以前なら専門家に依頼しないと難しかった売買交渉も、今では経営者同士が直接条件を擦り合わせる事例も増えています。

飲食・サービス業が特に活況な理由

スモールM&Aの対象業種の中でも、飲食・サービス業は特に取引件数が伸びています。これには以下の理由があります。

  • 立地・顧客・スタッフが既に存在するためゼロから立ち上げるよりも安定
  • 一定の地域ブランド・口コミ・リピーターが形成されている
  • 多店舗展開・フランチャイズ化しやすい業態が多い
  • 設備資産・ノウハウがパッケージ化されやすい

特に居酒屋・カフェ・ラーメン・美容院・整体・フィットネス・介護施設などは典型的なスモールM&A対象となっています。

いま「事業の世代交代」を考えるべきタイミング

M&Aというと「売るのは業績悪化したとき」という誤解も根強いですが、実際は業績が安定しているうちに売却を検討するのがベストタイミングです。黒字の状態であれば、企業価値評価(バリュエーション)も高くなりやすく、希望条件での売却が進みやすいのです。

また、M&Aは単なる「売る」「買う」だけでなく、

  • 子会社化して段階的に承継する
  • 共同経営でしばらく事業継続する
  • フランチャイズ本部が加盟店をM&Aする

など柔軟な組み合わせが可能です。これが「事業の世代交代=承継型M&A」の強みでもあります。

今後ますます高まる「スモールM&A」の重要性

日本全体の事業者数は、今後も少子高齢化と共に減少傾向にあります。だからこそ、**「良い事業は残し、無理にゼロから作らず、上手に承継・引継ぐ」**という選択肢がますます重要になっていきます。

FMDIでも、飲食・サービス業のM&A・事業承継を積極的にサポートしていますが、オーナー経営者の多くはまだ「M&Aは自分には関係ない」と感じている方が多いのが現状です。

実は**「いつかはM&A」ではなく「今から準備するM&A」**こそが理想です。

  • 決算書の整理
  • 業務マニュアル・オペレーションの整備
  • キーマンスタッフの育成
  • 賃貸契約・設備契約の見直し

こうした**「事業価値を上げる整備」**を先に行うことで、売却時の企業価値を大きく高めることができます。

まとめ

スモールM&Aは、飲食・サービス業の経営者にとって今後ますます身近な経営戦略になっていきます。
今のうちから「事業の世代交代」を見据えて、早めの準備を進めていくことが、事業と従業員、お客様を守る最大の経営判断になるでしょう。

 

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