第538話 米価格高騰で「ご飯の質」が危機に。飲食店と外食業界はいま何に直面しているのか?

2025年初夏、外食業界を揺るがすひとつの現象が静かに進行しています。それは「お米の価格高騰によるご飯の質の低下」。
多くの人が何気なく口にしている“白いご飯”が、いま外食産業全体の構造を揺るがす課題となっています。

米価高騰の背景にあるのは、異常気象と需要の急増

2023年以降の異常気象により、全国的に稲の作況は悪化しました。猛暑や水不足の影響で収穫量が減り、特に等級の高い1等米の流通量が激減。さらに、外食需要の回復やインバウンド需要、自治体の備蓄需要も重なり、需給バランスが崩壊しました。

その結果、国産米の価格は前年比で1.5~2倍にまで跳ね上がっています。

政府は緊急備蓄の放出や輸入枠拡大に乗り出しましたが、依然として市場には高値が続いています。

外食店のご飯はどうなった?シュリンク化・品質ダウンも

特にご飯を主軸に据える定食屋や丼物チェーンは、この打撃をモロに受けています。

仕入れコストが2倍近くに達したことで、次のような対応が見られます:

  • ご飯の量を減らす(“見えない値上げ”=シュリンクフレーション)
  • 「おかわり無料」の廃止または有料化
  • ブレンド米や外国産米(米国カルローズなど)の導入
  • 雑穀・米麺などへの代替提案

なかには「以前と比べて、ご飯がパサパサしている」「香りが薄くなった」と感じるお客様の声も散見されており、品質への影響も出始めています。

消費者は“ご飯離れ”?それでも「美味しいなら高くてもいい」意識も

消費者側も変化しています。ある調査では、8割以上が「米価格の高騰を実感している」と答え、3人に1人が「購入量を減らす」と回答しました。

一方で、「美味しいご飯なら多少高くても買い続けたい」という声も約7割にのぼり、ご飯の“質”への期待は根強いままです。

今後の展望:一時しのぎか、業態の再構築か

短期的には、政府による備蓄米の放出や、輸入米の増加などで多少は供給が安定するかもしれません。

しかし、農業の担い手不足、気候変動の常態化など、構造的な問題は深刻です。
今後、飲食業界が「コメ」というインフラ原料にどう向き合うかは、単なる仕入れ調整を超えた業態・価値提案の再構築が求められるテーマとなるでしょう。

まとめ

  • 米価高騰は一過性の問題ではなく、外食業界の根幹を揺るがすリスク
  • ご飯の質や量を見直す動きは進行中
  • 今後は“価格”だけでなく、“美味しさ”と“価値”の再設計がカギに

外食ビジネスにおいて“お米”は単なる材料ではありません。
「ご飯の質を守ること」が、その店の“おもてなし”の象徴になる時代が、もう始まっているのかもしれません。

 

 

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