第543話猛暑と節約志向が交差する外食市場の今——6月の外食実績から読み解く最新トレンド

日本フードサービス協会が発表した2025年6月度の外食市場データによると、外食業界は前年同月比106.0%と堅調な売上成長を見せました。一方で、記録的な猛暑や物価高騰による節約志向の高まりなど、消費者行動の変化が随所に見られる結果ともなっています。

今回は、6月の外食市場の動向を振り返りながら、気温・物価・キャンペーン施策などがどのように外食業態に影響を与えたのかを詳しく解説します。

猛暑は諸刃の剣——冷たいメニューは好調も、外出控えで客足鈍化

6月は月末にかけて「記録的な高温」が続き、冷たい麺類やドリンク類、ビールなどの涼感メニューが各業態で人気を博しました。また、物価高による節約志向の高まりを背景に、低価格で楽しめるファーストフード(FF)業態や各社のキャンペーン施策が集客に貢献した形です。

しかし、あまりに暑すぎる気候は逆効果となる場合もあり、特に日中の外出を控える動きが見られたことから、客数の伸びは鈍化。全体では101.9%と売上には届かず、曜日の巡り(6月の土曜日が少なかった)も影響して、一部業態では前年割れとなりました。

ファーストフード業態:コスパ訴求がカギ、和風と麺類が好調

ファーストフード全体では売上106.9%と好調を維持。中でも和風ファストフードは売上112.5%と大きく伸長しました。毎月替わる定食メニューや、夏向けの冷たい麺メニューが支持を集めたほか、猛暑の中で「さっぱりした和の味」を求めるニーズも顕著に現れました。

また、うどんを中心とした麺類業態では、冷やしメニューや新たなサイドメニューが好評で売上109.0%。洋風ファストフードもランチメニューや限定メニューが奏功し、売上105.2%となっています。

一方で、持ち帰り米飯や回転寿司は売上103.4%ながら、客数は94.7%と前年を下回り、単価上昇による売上維持が見て取れます。

ファミリーレストラン業態:中華・和風がけん引も焼肉は苦戦

ファミリーレストラン(FR)全体では売上104.6%。和風FRはとんかつなどのインバウンド需要や、食べ放題メニュー、リーズナブルな価格設定によって売上107.0%と好調を維持しました。中華FRはフェアやキャンペーンによる集客が成功し、108.9%とさらに高い伸びを記録。

一方で、焼肉業態は曜日まわりの悪さや猛暑の影響で、売上99.6%と唯一前年割れとなりました。焼肉は家族やグループでの利用が多いため、気候やカレンダー要因の影響を受けやすいと言えるでしょう。

居酒屋・ディナー業態:回復基調も“頭打ち”の兆し

パブ・居酒屋業態では、ビール類の販売が堅調で客単価が上昇し、売上は102.3%。しかし、コロナ後の回復フェーズに一服感が出始めており、客数面ではやや頭打ちの印象も否めません。

ディナーレストラン業態も、節約志向や猛暑の影響を受けてシニア層の来店が減少。郊外立地の店舗では苦戦が見られました。ただし、平日ランチメニューの“お得感”が客層を呼び込み、売上は101.6%と堅調を維持しています。

喫茶業態:猛暑が追い風、ドリンク売上が牽引

6月の外食市場で最も売上の伸び率が高かったのが喫茶業態で、売上112.0%を記録しました。特に月後半の猛暑を背景に、冷たいドリンクのニーズが急増。加えて、物価高による“ちょっとした贅沢”としてのカフェ利用も一定数存在し、客単価の上昇が全体の売上を押し上げました。

今後の外食戦略のヒント

今回の6月データから見える外食市場の傾向は次の通りです:

  • 猛暑対策×季節メニュー:冷たい麺・ドリンク・アイスのような季節限定メニューの訴求が集客に直結。
  • 価格・コスパ重視:ランチセットやキャンペーンなど、「お得感」が強い商品が支持を集めている。
  • 平日対策の強化:曜日周りの悪影響を補うため、平日ランチや持ち帰り需要の強化が鍵。
  • インバウンド対応の重要性:とんかつや和食など訪日客の需要を満たす業態は今後も注目。

外食市場は引き続き、気候や経済環境、ライフスタイルの変化に対応した柔軟な戦略が求められています。7月以降も記録的な暑さが予想される中、飲食店は“涼”と“コスパ”をキーワードにしたメニュー開発と販促を強化することが、次なる成長のカギとなりそうです。

 

 

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