第544話「なぜ“お金持ち”はファミレスで“価値教育”を受けるのか?」
なぜ「資産数十億円の層」が普通のファミレスに行くのか?
外見からは想像しづらいですが、日本の多くの超富裕層(少なくとも資産50億円、年収5億円以上)は、普段の外食にはあえてファミレスやファストフードを選ぶ傾向にあります。この選択には単なる節約ではない、人生哲学とも呼べる深い理由があるのです。
理由①:「昨日より一緒に上がっている実感=幸福」哲学
執事として長年サポートしてきた著者は、超富裕層の方々が抱く幸福観をこう語ります。
「幸福とは、今の自分が昨日より一段上がったと感じられること」
贅を重ねれば満足も刹那的になり、幸福感のベースラインが上がりすぎて、成長感が失われてしまう。だからこそ、日常には「相応の選択感」を残すことが大切なのです。
理由②:「心の貧困」への予防線
日常的に高級店で贅沢を繰り返すと、物事の価値を判断する感性が鈍ってしまいます。ある執事経験者は、こう言いました。
「日常で贅沢をさせすぎると、子どもの未来から『幸福感』を奪ってしまう」
この恐れが強いため、家族には質素さを啓蒙のツールとし、幸福の感度を研ぎ澄ませる教育スタイルを選ぶのです。
理由③:価値と価格のコスパ感覚を鍛える
ファミレスはメニューが単純で、客を選ばず、注文の段階で割安感と満足度との差を即座に肌で知る環境です。味や接客に過不足がなく、価格と得られる満足が非常に見えやすいため、コスパ感覚を養う“教材”として機能します。
超富裕層は、自身も含めて、家族や子どもに「価値判断の良し悪し」を肌で学ばせるための教育機会に、こうした場所を戦略的に使っている背景があります。
実例で見る!超富裕層のファミレス活用法
シーン | 意図・意味 |
毎月決まった時間に○○のファミレスへ | 「固定費を払いながら、普通の居心地を知るルーチンにする」 |
子どもが注文する際の注文方法を無評価 | 「自発性を支援し、判断力を育てる」 |
高級外食との対比で事後会話を行う | 「『今日のラーメン代であのステーキと同じ満足度が得られた』など、感覚の尺度教育」 |
日常と非日常を使い分ける「贅沢のレンジ管理」
超富裕層にとっての贅沢は、一足飛びに到達するものではなく、“贅沢のレンジ”を上げないことにこそ意味があります。高級店を日常とせず、子どもに“そこは非日常的なステージになるよ”と示す。ステージの頂点にあえて「普段の自分の姿」を置くことで、大きな人生のステップを実感させているのです。
まとめ:普段の食を通じて哲学を伝える
- 超富裕層が外食でファミレスを選ぶのは、コストではなく「価値の体験」を日々磨くため。
- 幸福とは日々の積み上げ感であり、むしろ“毎回特別”にすると成長感が鈍る。
- ファミレスというほどよい日常感、価格感、判断機会を使って、日常的に価値教育をしている。
年収や資産がいくらであっても、「なぜ」「どういう意図で」その行動を選ぶかが見えると、その人の思考の深さや戦略が見えてきます。
なお本記事は、ダイヤモンド・オンライン(2025年7月27日付)に掲載された新井直之氏の記事内容をベースに構成しております。執事として超富裕層に仕えた筆者が語る、日常生活の哲学と価値観の裏にある深い構図をリライトしています。