第561話 外食は“値上げ後の新常態”へ──2025年10月、外食市場から見える次の勝ちパターン
2025年10月の外食市場データが公表されました。売上は前年同月比 107.3% と堅調に推移し、依然として外食需要の強さを確認できる月となりました。
しかし、その内側を丁寧に見ると、外食各社が今まさに直面している「新しい構造変化」が浮き彫りになります。
今回は、外食・多店舗化・FC化を支援する立場から10月の状況を読み解きます。
1.売上は伸びても、実態は“客単価の押し上げ”による回復
全体の売上107.3%という数字は一見好調に見えます。しかし、同時に客数は 103.2%、客単価は 104.0% と、売上成長の主因が客単価の上昇にあることがわかります。
値上げ、限定メニュー、キャンペーンを組み合わせた「単価での収益確保」が定着しつつあります。
これは外食に限らず、小売、美容、サービス業全体に広がる傾向ですが、外食は特に顕著です。
“値上げを受け入れる消費者”と“節約に回る消費者”が二極化し、店の戦略の巧拙が数字に直結している。
これが現場の実感とも一致します。
2.ファーストフード(FF)が10月も強い背景
FF全体の売上は 107.7% と堅調。
特に「洋風FF」は 110.4% と際立つ伸びを見せました。
好調の理由は3つあります。
①“即食・低価格・短時間”の再評価
物価上昇や生活防衛意識の中で、「外食だけど節約したい」という層が確実に増えています。
②季節メニューとお得キャンペーンの圧倒的な強さ
FFは商品開発とプロモーションのスピードが早く、限定商品がSNSで拡散されやすい。
③インバウンドの回復
ターミナル型店舗では外国人客が戻り、10月後半に数字の改善が見られています。
FFは依然として、外食の“交通インフラ”としての役割を果たしており、景気の良し悪しを超えて強い形を見せています。
3.ファミレス(FR)は“低価格帯”が牽引
FR全体の売上は 106.7%。
その中で特に強かったのは:
- 洋風FR:107.8%
- 和風FR:107.4%
- 中華FR:108.8%
共通する特徴は明確で、「低価格 × お得クーポン × 大衆性メニュー」 の組み合わせが強いということです。
一方で、
- 焼肉FR:99.7%
と、肉系の価格高騰により客数回復が鈍い状況も見て取れます。
FRの世界では、“客単価が高い業態ほど回復が遅い”という構造が鮮明です。
4.居酒屋は月後半に復調──大阪万博効果も
パブ/居酒屋は 104.2% と久々の回復。
特に大阪圏では万博の後押しがあり、繁華街にも人が戻ってきました。
ただし、数字の中を見ると、
- 週前半は客足が弱い
- 週末・月後半に集中して盛り返す
という「波の大きい需要構造」が続いています。
“安定的に稼ぐ”モデルを作れた店と、週末頼みの店の格差が拡大している。
これも10月の特徴と言えます。
5.喫茶業態は110.6%で絶好調
喫茶業態が 110.6% と高い伸びを見せています。
要因は明確で、
- お得なランチの訴求
- 万博や行楽需要の増加
- カフェ利用のレジャー化
特に都心部では「非日常を求める若者層のカフェ需要」が強く、喫茶は単なる飲食ではなく体験業態として進化しています。
6.10月のまとめ──“勝つ店”の条件がより明確に
今回のデータから、これから勝つ外食モデルの条件がより鮮明になりました。
①「低価格 × 価値メニュー」が王道に返り咲き
値上げ後の世界では、高価格よりも、“納得感のある価格”が圧倒的な選択基準になっています。
②単価戦略だけでなく、客数を作る“お得キャンペーン”が不可欠
数字を押し上げているのは、
- 期間限定
- ハロウィーン
- 季節メニュー
- クーポン
こうした“動機付け”です。
③インバウンドに強い立地は確実に伸びる
ターミナル、観光地、都心は明確に追い風を受けています。
④焼肉・高単価業態は戦略転換が必要
価格の天井が見え、“ボリュームより価値訴求へ”移行する必要があります。
最後に:外食は“選ばれる理由づくり”が分岐点へ
2025年の外食は、「来てくれるお客様をどう増やすか」から「なぜ選ばれるのか」へ
戦略軸がシフトしています。
今回の10月データはその変化を如実に示していました。
多店舗展開・FC化を目指す企業は、今こそ
- 価格設計
- 季節メニューの開発
- SNSでの話題作り
- 立地戦略
- モデル収益の最適化
こうした“再現性のある仕組みづくり”に向き合う時期に来ています。
今後もFMDIとして、現場に役立つ視点で外食市場の変化を読み解いていきます。
