第562話(米国最新情報)消費者は「外食を続けている」。しかし、外食の現場では“静かな地殻変動”が起きている
― FMDI視点で読み解く、2026年に向けた外食ニーズの変化 ―
アメリカの最新レポート(Toast、OpenTable、Resy)を見ると、外食市場は依然として強い需要があります。しかし同時に、顧客の行動・価値観は確実に変わり始めている。
この流れは日本の外食にも必ず波及します。
私が長年店舗現場と多店舗展開に携わってきた経験から、今回のデータは“単なるトレンド”ではなく、これからの店舗づくりを左右する構造変化と言えます。
- 「早い時間に外食する」人が急増
レポートによれば、朝9時・10時の予約が前年比15〜19%も増加。
夕方も16〜17時の早割ディナーが強く伸びている。
日本でもすでに「早い時間に混む店」が増え、都心でも17時台から満席の店が珍しくありません。
その背景には:
- 物価上昇の中でハッピーアワーに価値を感じる
- 混雑を避けたい
- 外食を短時間で効率よく楽しみたい
があります。
これは店舗にとって大きなチャンスです。
ピークを分散できれば、売上も人時生産性も大きく改善できる。
- 外食は「日常」から「ご褒美」へ
アメリカの61%が「外食は特別な体験になる」と回答。
日本でも最近、“特別感のある外食”に行列ができる傾向が強まっています。
実際、OpenTableのデータでは
“体験型ダイニング”が前年比46%増。
これは単価競争ではなく、
- 店のストーリー
- ライブ感
- 限定メニュー
- コラボイベント
などの“理由のある外食”が求められている証拠です。
FCや多店舗展開を進める企業でも、「体験価値」をどれだけ組み込めるかが今後の鍵になるでしょう。
- カウンター席・バー席が急増
Resyの調査では、
- カウンター席 26%増
- バー席 23%増
これは、**「広さより親密さ」「つながり感のある空間」**への移行です。
日本でも、バーカウンター型のファミレス、シェフズテーブル形式、
一人客が入りやすい店が確実に増えている。
外食が“人との接点の場”である以上、
店舗設計はこれまでの「テーブル中心」から変化せざるを得ません。
- Instagram/TikTokが最重要の集客動線
Z世代の77%、ミレニアルの79%が
「SNS映えを店選びの基準にする」と回答。
今は“料理がおいしい”だけでは選ばれません。
- 写真の撮りやすい光
- 映える盛り付け
- ミニマムなインテリア
- そしてなんと**「インスタ映えするトイレ」**も重要(21%が必要と回答)
トイレまで映えを求める時代だという事実…。
これを「バカらしい」と切り捨てるか、
「時代の変化」と受け入れるかで明暗が分かれます。
SNS映えは、外食業界における新しい販促費ゼロの広告媒体と捉えるべきです。
- 外食需要はむしろ増える可能性
最も希望が持てるのは、
55%の消費者が「来年は外食の回数を増やしたい」
と回答している点です。
景気不安はありつつも、
外食は“人とのつながりを感じられる場”として、支持が高まっている。
Resyの調査でも、相席で知らない人と仲良くなった事例が多数報告されています。
外食は、デジタル疲れの中で
「リアルなコミュニケーションの場」として再評価されているのです。
■ FMDI坂本のまとめ
データから見えることは明確です。
✔ 外食は減らない
✔ しかし、“選ばれる基準”は大きく変わった
✔ これからの繁盛店は「体験 × 写真 × 空間 × 価値」を設計できる店
つまり、料理・サービスだけでなく
“店全体を企画する力”が問われる時代になっている。
そして、この潮流は日本にも必ず訪れます。
むしろ、すでに始まっている。
- 外食企業への提言(坂本より)
- ピーク分散型の営業時間戦略を再設計せよ
- 体験型メニュー・イベントを月1回でも導入する
- 店のストーリーをSNSで可視化する
- 店舗デザインは「写真優先」で考える
- カウンター席・一人席強化で来店障壁を下げる
2026年に向けて、外食は“再成長期”に入ります。
勝つのは、
「顧客がその店を選ぶ理由」をつくれる店。
