第563話【FMDI坂本が読む】焼肉ライク閉店ラッシュの本質
―「モデルの限界」か「運用の設計ミス」か、外食チェーンの行方を分ける分岐点
外食市場で静かに広がっていた“異変”が、ついに表面化した。
ひとり焼肉ブームの象徴「焼肉ライイク」で閉店ラッシュが始まった。
尼崎、神保町、名古屋伏見、大宮西口、川崎東口…
都市部を中心に、順調だったはずの店舗網が次々と失われている。
私はこれを単なる「ブームの終焉」ではなく、外食チェーンが成長期から成熟期に差し掛かったとき必ず直面する“構造課題”が表面化したと見ている。
■① なぜ成功した業態が急失速したのか
焼肉ライクのスタートダッシュは、外食史に残るほど鮮烈だった。
- 個食需要 × 焼肉
- 標準化・コックレス化による“低価格高速回転モデル”
- 1人1ロースターという新体験価値
これらが見事に噛み合い、わずか3年半で約130店舗に到達した。
FMDIの視点で見ると、ライクの成功を支えたのは以下の3つだった。
- 非効率の象徴だった焼肉を、個食に最適化した設計思想。
- 動線・調理・提供すべてを“マニュアル化”し、人件費を大幅に圧縮。
- 法人を積極的に巻き込むFCモデルで、一気に店舗網を拡大。
つまり、プロダクト(業態)・オペレーション(仕組み)・ファイナンス(収益モデル)がきれいに組み上がった“教科書のようなビジネスモデル”だった。
だが、その設計こそが、今の失速につながる伏線だった。
■② FC依存モデルの弱点が一気に露呈
焼肉ライクは店舗の約9割をFCが占める。
しかも加盟者の多くは「法人」。ここにリスクがあった。
法人FCは
- 経営判断が事業全体の優先順位に左右される
- 採算が悪くなると撤退スピードが速い
- 本部への協力体制も個人FCほど強くない
という特徴がある。
実際に、
- 幸楽苑はライクへの投資を停止
- オートバックス系バッファローフードサービスも出店ストップ
と、『法人FCの“方針転換による連鎖撤退”』が今の閉店ラッシュの大きな要因となっている。
これは天一の大量閉店(エムピーキッチン集団離脱)と非常に似た構造だ。
つまり、「FC依存型モデルのリスクが一斉に炸裂している」。
■③ ビジネスモデルの“前提”が変わった
焼肉ライクの収益モデルは、
- 客単価:1100〜1500円
- 滞在時間:25分
- 高回転 × 省人化
- 原価・光熱費のコントロール
これらの条件が揃って初めて成立する。
しかし2023〜2025年にかけて外食の環境は激変した。
- 原価高騰
肉・油・米すべて上昇。焼肉は特に直撃を受ける。
- 光熱費高騰
一人一台ロースターは“快適”だが、電力消費も比例して増える。
- 人件費上昇
「人を使わない業態」と言われたが、最低限の人員は必要であり、人件費の影響を逃れられなかった。
これらの環境変化により、以前は17.3%あった営業利益は、
多くの店舗で計画未達に転落。
FC加盟企業は
「本部のモデル通りにやっても利益が出ない」
と判断し、撤退を加速させている。
■④ 「コスパの悪化」という致命的なブランド毀損
口コミを見ると、
- 「値上げしてから魅力が薄れた」
- 「580円で食べられた時代とは違う」
- 「味に対して価格が見合わない」
という声が急増している。
本部にとって“価格改定”は収益維持の最終手段だが、
焼肉ライクの価値は「安い・早い・自由」だった。
価格が上がり、体験価値に変化がないままなら
顧客は必ず離れる。
つまり、
ブランドの核価値と価格戦略がズレはじめたのである。
■⑤ 坂本が考える「焼肉ライク復活」の鍵
私は外食チェーンを数百ブランド見てきたが、
焼肉ライクはまだ沈む船ではない。
だが以下の改革は避けられない。
① 価格に見合う“体験価値”の再設計
- 肉の質
- サイドの充実
- ロースター体験のアップデート
値上げ後の“新しい満足”が必要。
② FCモデルの再構築
- エリアフランチャイズの整理
- 加盟基準の厳格化
- 利益構造の可視化と改善サポート
「加盟企業が儲かるモデル」を再度作らなければ前進はない。
③ 海外と国内のバランス再調整
海外110店舗は強みだが、
国内網の弱体化は物流効率とブランド価値を下げる。
少数精鋭の直営再構築が鍵になる。
■まとめ — 焼肉ライクは岐路に立っている
焼肉ライクの失速は
「良いモデルが環境変化に適応できなくなった」という典型例であり、
外食チェーン全体にとって大きな学びになる。
しかし、裏を返せば
“仕組みで成功したブランドは、仕組みを見直せば再成長できる”
ということでもある。
外食産業は、常に変化にさらされる。
勝ち続けるチェーンは、
モデルを磨き続ける覚悟を持つチェーンだけだ。
焼肉ライクの次の一手に注目したい。
