第571話 2月に「増量キャンペーン」が急増する背景と外食・コンビニの販促戦略

FMDI 坂本視点:消費低迷期における顧客体験価値の再設計

2月──日本の消費行動を語る上で、実は非常に興味深い「谷間」の月です。年末年始の大型商戦が終わり、節分やバレンタインといった季節イベントはあるものの、消費全体は例年、年度末のムードや気温低下の影響もあってやや低迷しがちです。実際、食品・飲料メーカーの価格据え置き・値上げ件数が前年比で大幅減少する動きもあり、食品の値上げ負担感は徐々に緩和傾向にありますが、それでも消費者心理はまだ強くはない状況です。

こうした“2月の消費の谷”を乗り越えるために、今年も外食・コンビニ各社が巧妙な販促戦略を展開しています。その代表が、「増量キャンペーン」──価格を下げるのではなく、内容や量を増やすことで「体験価値」を高める訴求です。

価格訴求から“満足体験訴求”へ

従来の2月販促は主に割引セールが中心でした。年始のセールが一区切りした後、「少しでも購買を刺激したい」という思いから、値下げを前面に出した価格訴求が、各社のスタンダードでした。しかし、原材料費や人件費の高止まりが続く中で、安易な値下げは企業負担が重く、持続可能性に疑問が生じてきています。

そこで注目されたのが、**「量を増やして満足感を提供する」**戦略です。価格は据え置いたまま、中身を増やすことで“お得感”を視覚的・体験的に演出します。これが消費者にとって“割引”とは違う価値として受け止められている点がポイントです。

具体的な事例:コンビニ・外食で進む増量策

2026年2月の主な施策を見ると、その傾向は明確です。たとえば、

  • コンビニでは「盛り」戦略が全面に
    大手コンビニチェーンでは、調理パンやおにぎり、惣菜を約50%増量する「盛りすぎチャレンジ」など、分かりやすい増量キャンペーンを展開。週替わりの商品構成で継続的な来店動機づくりも図っています。
  • 駅ナカコンビニでも地方・通勤需要を取り込む増量
    NewDays(駅ナカコンビニ)では、弁当やサンドイッチ等を具材約40~50%増量する「値段そのまま増量フェス」を実施。通勤・通学という日常動線の中での“ついで買い”を刺激する仕掛けです。
  • 外食チェーンは“肉・満腹感”で勝負
    「肉の日」やバレンタインに合わせて、焼肉・定食、丼ものなどの肉量を通常の1.3~1.5倍に増量する企画が目立ちます。例えば、人気の牛肉メニューを対象にした増量フェアや、焼肉店での肉増量+生ビール激安提供といったインパクトある施策が相次いでいます。
  • ファストフード・カジュアルでも体験拡充
    丸亀製麺の「うどーなつ」では、5個入り通常価格のまま8個入りに増量する施策や、バレンタイン向けのディップソース無料提供など、増量と付加価値を同時に提供する施策が打ち出されています。

なぜ2月に増量戦略が有効なのか?

こうした“増量訴求”が2月に特に効果的な背景には、いくつかの構造的な理由があります。

消費のムードが全体的に低調

年末年始特需が終わり、一年の中で消費が落ち込みやすい時期だからこそ、「価格以外の魅力」で消費者を動かす工夫が必要になります。

② SNS・口コミ時代の“視覚的訴求”が効く

増量された商品は、見た瞬間にボリューム感が分かり、写真映えもしやすい。結果としてSNSでの自然な情報拡散が起こり、消費者間の動機付けを強化します。

既存行事の活用

2月は毎月29日を“肉の日”とする文化が定着しており、29日がない年でも“2月9日”を肉の日のフックにした販促企画が組まれるようになっています。これが増量施策との相性も良く、販促の起点になっています。

消費体験価値の再定義──FMDIの視点

今回の2月販促を見ると、単なる“価格競争”ではなく、消費者体験価値の創造にフォーカスした施策が目立ちます。これは、物価高や購買意欲の変化が続く中で、企業が「価格以外の価値」をどう伝えるかというマーケティングの本質に立ち返った動きだと言えます。

ボリュームや満足感の訴求は、消費者にとって直感的に分かりやすく、かつコスト感を抑えながらの満足度向上に繋がるため、価格訴求に頼らないブランド体験の底上げにも寄与しています。

特に2月のような“消費の山と谷”が顕著なタイミングでは、企業側の戦略の巧拙が結果に直結します。限定性・話題性・視覚訴求──これらを組み合わせた増量キャンペーンは、今後も消費環境の変化に応じた販促のひとつのモデルケースとなるでしょう。

 

 

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