第453話 日本でオープンイノベーションがうまくいかないのはなぜか?
早稲田大学の清水洋教授とJapan Innovation Network(JIN)の常務理事である松本毅氏による記事では、アメリカにおけるオープンイノベーションの考え方と、それが日本でなぜうまくいかないのかについて論じています。その要約を見てみましょう。
オープンイノベーションとは
オープンイノベーションとは、社外の技術や知識を製品開発などに取り入れることを指します。アメリカではこのアプローチが盛んですが、日本では実践するのが難しいとされています。日本の企業はしばしばイノベーションとインベンション(発明)を混同し、内部資源にのみ依存しようとする傾向があるためです。
イノベーション対インベンション
イノベーションは新しい経済的価値を生み出すことを意味し、市場に新製品やサービスを導入するだけでは不十分です。イノベーションは、新しいアイデアを経済的価値に変える戦略を伴うべきで、他社や市場との協力を通じて行われるべきです。これは、自社内で完結しようとする日本の傾向とは対照的です。
オープンイノベーションの本質
オープンイノベーションの本質は、「経済的価値を生み出す新しいもの」をオープンに創造することにあります。これは、価値創造の障壁を理解し、市場の力を利用してそれらを取り除くことを含みます。例えば、GEは燃費向上のためのジェットエンジンブラケットの設計を公募し、世界中からの提案の中から最適なものを選びました。アップルも同様に、Xcode開発ツールを提供することでApp Storeに多様なアプリを集め、製品の価値を高めています。
オープンイノベーションへの戦略的アプローチ
新しい価値をどこで生み出すかを戦略的に決定することが重要です。アメリカの企業は、持続可能な価値創造のためにビジネス構造そのものを変えるようなシステムを考えますが、日本ではより良い製品を作ることに重点を置いています。オープンイノベーションを進めるには、社内で行うべきことと外部の力を借りるべきことを明確に区分する必要があります。
日本企業の課題と機会
日本の企業は、主要事業に公募のアイデアを活用することをリスクと見なすことが多いです。しかし、GEやアップルの例は、設計やアプリ開発など特定の機能を外部に委託することが可能であることを示しています。記事は、日本の企業がビジネスの課題を分類し、内部で行うべきこととオープンイノベーションを通じて外部から利益を得るべきことを明確にする必要があると提言しています。
結論として、記事は日本の企業に対し、外部のリソースを活用して単独では不可能な新しい価値を創造するためのオープンイノベーションへの思考の転換を促しています。このアプローチは、現在のグローバル経済環境に合ったよりダイナミックで競争力のあるビジネス慣行につながる可能性があります。