第520話スターバックスの立地別値上げと外食業界への波及効果

スターバックスコーヒージャパンは、国内約600店舗(全店舗の約3割)において、立地に合わせた新たな価格体系を2022年以降4年連続で実施することを発表しました。これまでは全国一律の価格設定でしたが、今回からは場所ごとに微調整が入ることとなります。

立地別値上げの概要

  • 都市部の店舗
    東京23区をはじめ、大阪市や名古屋市などの主要都市の一部店舗では、定番の飲料メニューが税抜きで約4%の値上げとなります。例えば、トールサイズの「ドリップコーヒー」(店内飲食時)は、420円から440円に上がります。
  • 空港や高速道路サービスエリアの店舗
    空港内や高速道路のサービスエリアなどでは、税抜きで約6%の値上げが実施され、同じくドリップコーヒーの価格が420円から445円に上昇します。

なお、同日内に2杯目を割安で提供する「One More Coffee」など、一部のサービスやカスタマイズメニューは、従来通りの価格が維持されます。スターバックスは、今回の価格改定を「立地や商圏に合わせた定期的な価格の見直しの一環」と位置づけ、海外で既に実施している手法を日本市場にも取り入れる形となりました。

外食業界への影響と今後の動向

スターバックスの立地別値上げは、外食業界全体にもいくつかの影響を及ぼすと予想されます。

  1. 立地に応じた価格戦略の普及
    大手チェーンが地域ごとの需要に応じた価格設定を行うことで、他の外食チェーンも同様の戦略を模索する可能性があります。すでに日本マクドナルドが採用している「都心型価格」や、すかいらーくホールディングスの「ガスト」での取り組みが、さらに広がる契機となるでしょう。
  2. ブランド戦略の再評価
    同じチェーン内でも店舗ごとに価格が異なることが明確になるため、消費者はブランド価値やサービスの質にも注目するようになると考えられます。他の外食チェーンも、価格競争だけでなく、付加価値の提供や店舗体験の向上に注力する必要が出てくるでしょう。
  3. 競争環境の変化
    都心や交通の要所での価格上昇は、価格に敏感な消費者が他店舗へ流れるリスクを孕んでいます。一方で、各社がそれぞれの立地に合わせた戦略を展開することで、業界全体での競争環境が一層ダイナミックになる可能性があります。
  4. 収益性の向上を目指す動きの強化
    立地ごとの価格設定は、店舗運営の収益性向上に寄与すると見られます。スターバックスの例は、コスト構造や需要の変動に応じた柔軟な価格戦略が、他チェーンにも導入されることで、全体の収益改善につながると期待されます。

 

スターバックスの今回の立地別値上げは、単なる値上げ以上の意味を持ち、国内外の外食業界に新たな価格戦略の波をもたらすといえます。消費者としては、各店舗での価格変動に加え、今後のサービス内容や店舗体験の向上にも注目していくことが求められるでしょう。

スターバックスの動向とともに、今後の外食チェーン各社の戦略にも目が離せません。皆さんも、日々のカフェタイムや外食の際に、これらの変化に注目してみてはいかがでしょうか。

 

 

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