第534話【外食の落とし穴】ビーフシチューにガラス片混入、中学生が誤飲した衝撃事故と店側対応に残る課題

2025年5月8日、東京都内にあるイタリアンレストランで発生した「ビーフシチューへのガラス片混入事故」が注目を集めています。事故の被害者は家族で外食中だった中学生の少年。好物のビーフシチューを口にしたところ、異物の違和感を覚え吐き出すと、そこには約1cmのガラス片が。さらに病院での検査により、胃内にも約8mmのガラス片が確認されました。

迅速な初期対応と父親の評価

事故直後、店舗スタッフは被害者家族のもとへ駆けつけ、誠意ある謝罪を行いました。父親Aさんは、「スライディング土下座の勢いで真摯に謝罪してくれた」と、その場での対応には一定の理解を示しました。しかし、その後の対応が問題を複雑にしていきます。

店側の説明と対応に募る不信感

後日、店舗の責任者および本社副社長からも謝罪を受けたAさん。しかし、その説明内容が問題でした。担当者は「1900年代に包丁の刃こぼれが一度あったが、それ以来このような事案はない」と述べ、今回の件を“例外的”と処理しようとする姿勢が見受けられました。

さらに、ガラス片の混入経緯については「以前にグラスが破損し、破片が食器に入った可能性がある」と説明。一見合理的ではありますが、これに対しAさんは「全く関係のない席で提供された料理に混入していた現実を軽視している」と強い憤りを感じたといいます。

ホームページ掲載のみ? 被害者の強い訴え

当初、店側は事故についての謝罪を公式ホームページに掲載するのみで済ませる方針でした。しかしAさんは「子どもや高齢者も来店する店で起きた重大な事案。再発防止と安全意識の徹底を周知してほしい」と、店頭での掲示も強く要望。その後、店側は謝罪文を掲出しました。

公式謝罪文では「心よりお詫び申し上げる」と記された一方で、Aさんは「現在も店側との協議中であり、誠意ある対応とは言えない部分もある」とコメント。事件が風化されることへの強い危機感をにじませています。

外食時の“異物混入” どう対応すべきか?

東京都保健医療局によれば、令和5年度には異物混入に関する苦情が546件寄せられています。今回のようなガラス片混入は、命に関わるリスクも伴うため、慎重かつ冷静な対応が求められます。

法律の専門家である溝上弁護士によれば、異物混入が発覚した場合は以下のような対応が推奨されます。

  1. 証拠の記録:異物の状態や状況をスマホなどで撮影
  2. 現場確認:店員を呼んで異物を一緒に確認
  3. 保健所へ連絡:正式な記録と対応につなげる
  4. 医療機関の受診:症状が出なくても診察・検査を受ける
  5. 情報の共有:新たな事実は保健所へ随時報告

許す文化”と“厳しく問う姿勢”のはざまで

事故を受けたスタジオ内では、「日本は誠意ある謝罪文化と許容が共存する社会だが、衛生面の管理は徹底されるべき」との意見が飛び交いました。米国であれば訴訟沙汰も視野に入るような案件ですが、日本ではまず誠意ある謝罪と再発防止策が問われるという違いもあります。

外食を楽しむはずの時間が一変して命の不安に変わった今回の事案。企業としての信頼回復と、再発防止に向けた真摯な取り組みが求められます。消費者もまた、落ち着いて対処しながら安全への意識を高めていく必要があるといえるでしょう。

 

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