第572話(輝く店長シリーズ)「叱る」から「伝える」へ──店長の伝達力を磨くフィードバック術
──否定ではなく改善を促す、“聴く・承認・方向づけ”の3ステップ
店長に求められる最も重要な能力の一つが「フィードバック力」です。
しかし現場を見ていると、
- 注意するだけで終わる
- 感情的に叱ってしまう
- 「伝えたのに伝わっていない」
- スタッフが萎縮して動かなくなる
このような場面を、誰もが経験しているのではないでしょうか。
フィードバックは、単なる「注意」や「指摘」ではありません。
正しく行えば、スタッフの行動が変わり、成長し、現場のサービス品質が向上します。
今回は、叱るのではなく“伝わる”指導を行うための、
3ステップのフィードバック術をご紹介します。
■ 「叱る」は感情、「伝える」は技術
まず理解すべきは、
叱ること=育てることではないという事実です。
叱られたスタッフは、
「怒られないこと」を優先して動くようになります。
つまり、
行動の目的が“改善”ではなく“回避”になる のです。
一方、「伝える」指導は、
スタッフの理解と納得を生み、行動を前向きに変えていきます。
感情ではなく、技術としての指導。
この違いが、店長の育成力を大きく左右します。
■ フィードバックの黄金ルール:「聴く・承認・方向づけ」
成果が出るフィードバックには、
次の 3つのステップ があります。
① 聴く(現状を把握する)
人は、話を“聴かれてから”でなければ、こちらの話を受け入れません。
まずはスタッフの視点に立ち、
「なぜその行動をしたのか」
「どんな意図があったのか」
を丁寧に聴き取ることから始めましょう。
例:
「さっきお客様への提供が遅れたけど、どんな状況だった?」
「対応が難しかったところはあった?」
スタッフが状況を説明しやすい空気をつくることがポイントです。
② 承認(努力・意図を認める)
人は「否定された」と感じた瞬間、耳を閉ざします。
逆に、まず“承認”してもらえると、次の指摘を受け入れやすくなります。
例:
「忙しい状況の中で、よく対応してくれていたね。」
「慣れない作業でも、一生懸命やろうとしていたのは伝わったよ。」
承認とは、ほめることではなく、
相手の事実・努力・姿勢を肯定的に言語化することです。
このワンクッションが、指導の効果を大きく左右します。
③ 方向づけ(改善ポイントを提案する)
最後に、具体的な改善行動に導きます。
ポイントは、
“次にどうすればよいか”を一緒に考えるスタンスです。
例:
「次に同じ状況になったら、提供順を先に整理するとスムーズになるね。」
「お客様が増える時間帯は、声掛けを分担しようか。」
方向づけは、命令ではなく“提案”。
その方がスタッフの心に届き、行動が変わります。
■ NG指導:「なんでできないの?」は最悪の質問
多くの店長がついやってしまう失敗例があります。
- 「なんでできなかったの?」
- 「どうして言われた通りにしないの?」
- 「前にも言ったよね?」
これは相手の“防御本能”を強く刺激し、
改善どころか、スタッフのモチベーションを奪います。
代わりに、
「どうすればもっとやりやすくなる?」
「次はどうしたいと思う?」
と、未来志向の問いに変えるだけで
会話の空気がまったく変わります。
■ 店長の言葉が、現場の空気を決める
店長が「叱る指導」を続けると、
現場からは挑戦が消え、
スタッフは“正解待ち”になります。
しかし「伝える指導」を続けると、
- スタッフが自分で考え
- 改善し
- 成長し
- 店長を支える存在になっていく
という、理想的な循環が生まれます。
店長の伝達力は、
単なるコミュニケーションスキルではありません。
現場の文化を変える力 なのです。
■ まとめ:叱る必要はない。“伝えれば”人は変わる
フィードバックは感情ではなく技術。
誰でも“叱らず伝える”指導ができるようになります。
今日からできる3ステップはこれだけです。
- 聴く(状況を理解する)
- 承認する(努力・意図を認める)
- 方向づける(次の行動を一緒に決める)
これを習慣にすると、
店長自身の伝え方が変わり、
現場は確実に動き始めます。
