第600話 外食売上6.8%増なのに、なぜ倒産は過去最多なのか
日本フードサービス協会が発表した2026年7月の外食産業市場動向調査によると、外食全体の売上は前年同月比6.8%増となりました。客数は3.2%増、客単価も3.5%増です。この数字だけを見れば、外食産業は順調に回復しているように感じます。
ところが、東京商工リサーチの調査では、同じ7月の飲食業倒産は112件に達しました。これは1997年以降の7月として過去最多です。1月から7月までの累計も621件となり、年間最多だった前年を上回るペースで推移しています。
外食売上が伸びているにもかかわらず、なぜ倒産する飲食店が増えているのでしょうか。
まず確認しておきたいのは、二つの調査は対象が異なるという点です。外食売上が増えた企業が、そのまま倒産しているわけではありません。しかし、業界全体の売上が伸びることと、個々の店舗に利益が残ることは別問題です。
現在の売上増加は、客数の回復だけでなく、値上げによる客単価の上昇にも支えられています。一方で、飲食店が負担する食材費、人件費、光熱費、家賃、物流費も上昇しています。仮に売上が5%増えても、総コストが8%増えれば、利益は減少します。
実際、7月の倒産では、物価高を原因とする倒産が23件、人手不足が13件、人件費高騰が12件発生しています。特に人件費高騰による倒産は前年同月の1件から大幅に増えました。もちろん、これらの要因だけで倒産したと断定はできません。販売不振や借入金返済、過去からの低収益体質などが重なった可能性があります。
ここで中小チェーンの経営者が注意しなければならないのは、「売上前年比」だけで店舗の状態を判断することです。
前年より売上が伸びていれば、店長も本部も安心しがちです。しかし、その売上増加が値上げだけによるもので、客数が減っている場合は注意が必要です。値上げには限界があり、客数減少が続けば、いずれ売上そのものも維持できなくなります。
多店舗企業では、全社合計の数字にも注意が必要です。好調店の利益で赤字店を補っていると、全社では黒字に見えても、店舗ごとの問題が隠れてしまいます。不採算店を長く抱えれば、資金だけでなく、本部やSVの時間、店長候補などの人材まで奪われます。
私が多店舗企業を見る場合、売上だけではなく、店舗別営業利益、粗利益額、客数、人件費、人時売上高、損益分岐点客数を確認します。そして、一時的な不振なのか、改善可能なのか、業態転換や撤退が必要なのかを店舗ごとに判断します。
市場が伸びているから、自社も大丈夫とは限りません。
むしろ業界全体が好調に見えるときほど、自社の問題を外部環境のせいにできなくなります。売上をつくることはもちろん重要です。しかし、これからの飲食店経営で問われるのは、「いくら売ったか」だけではなく、「その売上から、いくら利益を残せたか」です。
売上前年比を見る経営から、店舗別の利益構造を見る経営へ。今、最も必要なのは、この視点の転換ではないでしょうか。
