第427話 宅配ピザチェーン進む大手寡占化

「宅配」という特性を生かして、コロナ禍でも好調を続けてきた宅配ピザチェーン。昨今の店舗数はどのような動きをみせているのでしょうか。日本ソフト販売株式会社がレポートを上げていましたので見てみたいと思います。

 

ピザチェーン全体の1年間(2022年1月~2023年1月)の店舗数推移をみると、ひと月も前月を下回ることなく推移しています。数としては、最も増加したのが2022年2月の20店で、そのほかでは10~15店舗増の月が多くなっています。一方で2~3店増やプラスマイナスゼロの月もあるため、平均すると月10店舗増のペースとなっています。

この結果、2023年1月と2022年1月を比較した前年同月比では、5.04%(120店舗)増加しています。「コロナ禍でも比較的好調」とみられてきた業態の中でも、寿司や焼肉チェーン以上の伸び率となっています。

 

上位4チェーンは前年同月比プラス、5位以降はマイナスか現状維持がほとんど

 

チェーン別店舗数ランキングを1月の前年同月比でみると、最も増加率が大きいのは3位「ピザハット」の9.52%(44店増)で、1位「ドミノ・ピザ」が8.91%(78店増)で続いています。4位「ナポリの窯」も7.14%(6店増)と堅実に増加しています。2位「ピザーラ」は、0.37%(2店増)の微増となっています。

 

ランキング上位4社の増勢に対し、続く4社(5~8位)はいずれもマイナス。「ピザポケット」と「ピザ・カリフォルニア」はそれぞれ1店舗ずつ、率にして1%台のわずかな減少に止まっているものの、「ピザ・ロイヤルハット」は5%(3店)の減少。最も大きな減少率となったのは「シカゴピザ」で、2ケタ台(10.53%:6店)の減少となっています。 結局、5位以降では10チェーン中6チェーンが前年同月を下回っており、3チェーンがプラスマイナスゼロの現状維持。10位「ストロベリーコーンズ」のみ約7%増と健闘しています。

 

売上高・店舗数増加の影で 進む大手寡占化

「店舗増」の中身は、ほとんど大手チェーンの増加分

 

ピザ協議会が調査・公表している「ピザマーケット推計値 2008-2021」の「ピザ宅配店・ピザ専門店のピザ売上高」によると、2008年度(1,152億円)から年々順調に増加していた売上高は2016年度に前年度を下回り、2018年度まで3年連続で少しずつ減少しました。ところが2019年度からまた増加に転じ、2021年度は1,932億4,000万円(前年度比108.3%)と拡大しています。この推移からコロナ禍前には頭打ち傾向だった需要が、デリバリー・テイクアウト好調が牽引する形で勢いを取り戻したものと考えられます。

 

これを裏付けるように、店舗数データでみても1年間(2022年1月~2023年1月)に5.04%増と全体では至って順調。しかしチェーン毎の状況も併せてみると、大手3チェーン(ドミノ・ピザ、ピザーラ、ピザハット)の増勢に対し4位以降は横ばいまたは減少しているチェーンばかりで、「店舗増」の中身がほとんど大手チェーンの増加分であることがわかります。実際、大手3チェーンの店舗数を合わせると、チェーン全体の約80%を占めており(※)、成長の影で大手への寡占化が進行していることを窺わせます。

 

中堅・中小チェーンは、なぜか西日本に多く分布

 

もっとも、「宅配」が大前提となっている業界のためか、ランキング4位以降の中堅・中小チェーンは地方中心に独自の展開を図るチェーンが多いようです。これらは地域的な傾向がみられ、中堅・中小10チェーン(4~14位)のうち7チェーンが近畿地方や福岡市、徳島市などの西日本に本拠地を置いています。店舗も全体的に近畿や九州、四国などへの出店が多く、北海道・東北や関東は少なくなっています。東京や横浜、仙台に本社があるチェーンですら関東への出店は少なく、むしろ近畿や四国・九州には比較的広い範囲に出店がみられます。

西日本に多い理由は定かではありませんが、大手も中小チェーンも創業時期があまり変わらないため、大手が進出する前に地元でいち早く創業したチェーンがある程度足場を固めたのではないかと推察できます。また中小チェーンの中には「お好み焼き」も提供しているところが複数あるため、いわゆる「粉もん文化」への親和性の高さも、西日本でピザ店が多い理由の一つかもしれません。

 

大手に偏っているとはいえ、コロナ禍の追い風を受けて店舗数が確実に増加しているピザ宅配チェーン。コロナ特需があった他の業界では2022年に反動減となるケースもみられましたが、ピザ宅配業界は今のところ好調を持続しています。

世の中がウィズコロナ、アフターコロナへと歩みを進める中で、引き続き需要を拡大していけるのか、大手チェーンの寡占化はさらに進んでいくのか、など、今後の動向が注目されます。

 

引用

【2023年版】宅配ピザチェーンの店舗数ランキング/日本ソフト販売株式会社

 

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