第449話 ゼンショー海外1万店 海外へ活路を目指す外食
10月6日日経Web版の内容を要約してお届けします。
ゼンショーホールディングス(HD)は、2024年3月期末に海外店舗数を1万店規模に拡大する予定で、これは国内外食業界で初の試みとなる。この拡大は前期比で6割増の新規出店と、海外のすし店の買収により達成される見込みで、国内の店舗数の2倍となる。特に、北米での展開が中心となり、米アドバンスド・フレッシュ・コンセプツ(AFC)が主要な役割を果たす。AFCは米国内のスーパーなどで「アボカドサラダロール」や「カリフォルニアロール」などの持ち帰りずしを提供している。
国際的な視点で見ると、2027年の世界の外食市場は、22年比で約4割増となる3兆8652億ドルに成長すると予測されている。この成長率は日本市場の2割増を上回る。ゼンショーは、アジアだけでなく、ブラジルやメキシコなどの新市場への進出や、M&Aを通じて店舗網をさらに広げる計画を持っている。
他の外食企業も同様に海外展開を加速しており、例として丸亀製麺を展開するトリドールホールディングスは、2028年3月期に4000店舗に拡大する予定である。ゼンショーは、海外展開と並行して、国内では賃上げを進める方針を打ち出しており、2030年まで毎年基本給の底上げを行う予定である。さらに、国内の牛丼チェーン「すき家」では、価格の見直しを進めて収益力を高める取り組みが進行中である。
来春の国内賃上げ、2%以上に
ゼンショーホールディングス(HD)は海外積極出店に加えて、国内では牛丼チェーン「すき家」などで値上げを進めて収益力を高める。外食世界チェーンへの脱皮に向けた取り組みについて、小川賢太郎会長兼社長に聞いた。
小川賢太郎ゼンショーHD会長兼社長
――2030年までのベア実施を労使で合意しています。
「国内総生産(GDP)の7割を占める外食を含む流通・サービス産業の基盤は個人の可処分所得だ。この20年の間に日本の1人当たりのGDPは下がり、かつて世界2位だったのが今は27位だ。1人当たりGDPを増やすには継続的な賃上げが必要だ」
「マクロ経済が活性化すれば、ミクロもついてくる。賃上げはコスト増ではない。外食トップ企業としての責任もある。きちんと進める」
――30年までのベア方針を掲げ、23年春には正社員平均で9.5%の賃金改善を実施しました。人材確保の状況は。
「量的にも質的にも成果が出ている。世界各地で採用したプロパー人材に海外事業を担っていってもらいたい」
――海外で持ち帰りずしの買収を積極的に進めています。
「日本では牛丼チェーンのすき家と(丼・うどんチェーンの)『なか卯』を出店し、両者で競争させながらすみ分けと成長を実現してきた。(持ち帰りずしの)アドバンスド・フレッシュ・コンセプツ(AFC)とスノーフォックス・トップコの両社も健全な競争関係を維持しながら、食材供給、物流などで相乗効果を上げ、収益力を高めて成長できると判断した」
「日本は打ち止めだとは思っていない。国内には70万店舗ほど飲食店があるが、ゼンショーグループはまだ5000店舗程度だ。価値のある食事を提供していけば存在感を高められる。海外でも展開スピードを上げる。すき家はアジアに加えて、ブラジルやメキシコなどに出店するなど展開地域を広げていく」
――2月にはすき家で一部商品を値上げしました。
「日本はデフレが長かったが、インフレ段階に入った。デフレの時代は牛丼を1杯250円で提供したこともあるが、今は基本的には値段を上げる。ただ価格は経営の根幹なので、すき家では特盛などの値段を上げる一方で並盛の価格は400円に据え置いた。基幹商品は企業努力で極力、消費者へのマイナス影響を抑える考えだ」