第545話 米国最新情報【テクノロジーで小さな厨房が大きく進化】

〜スチームコンベクションオーブンが変える飲食店経営〜

飲食業界では近年、人材不足や家賃高騰、原材料価格の上昇など、経営環境はますます厳しくなっています。そんな中、限られた厨房スペースと人員で多様なメニューを効率的に提供するための設備として注目を集めているのがスチームコンベクションオーブンです。

この調理機器は、蒸し・焼き・煮込み・エアフライ・低温調理など、複数の加熱方法を1台でこなすことができ、異なる食材を同時に調理できるのが特徴です。これにより、メニューの幅を広げながらも作業工程を減らし、調理の効率化と品質の安定を実現します。

■ニューヨークのファストカジュアルチェーンの事例

ニューヨーク郊外で17店舗を展開するあるファストカジュアルチェーンは、創業当初はサラダやグレインボウルなど冷たいメニューのみを提供していました。ところが、より幅広い顧客層に対応するため、温かい料理やタンパク質を使ったメニューを追加。
課題となったのは、1店舗あたり9〜28㎡程度という限られた厨房スペースと、熟練シェフを常駐させないオペレーションの中で、どうやって効率的にメニューを拡充するかでした。

そこで導入されたのがスチームコンベクションオーブンです。注文ごとに異なる調理を短時間でこなせるため、パニーニを焼きながら鶏肉を蒸すといった同時調理が可能になり、味移りも防げます。

■誰でも短期間で操作可能

最新モデルのスチームコンベクションオーブンは、タッチパネル操作で数回ボタンを押すだけ。調理経験のないスタッフでも数日で基本操作を習得でき、自宅で料理経験のあるスタッフなら1時間程度で使いこなせます。
また、機器によっては食材ごとの調理方法や時間を自動で管理する機能が搭載されており、常に均一な仕上がりが得られます。

■清掃の自動化で人手不足対策

最新機種には自動洗浄機能が備わっており、専用カートリッジをセットすればボタン一つで清掃が完了。遠隔操作やタイマー設定にも対応し、営業終了後の片付け作業を大幅に削減できます。これにより、スタッフの負担軽減や人件費削減にもつながります。

■多店舗展開や小規模店舗にも対応

スチームコンベクションオーブンは、カウンタートップ型のコンパクトモデルから、1日数百食を調理できる大型モデルまでラインアップが豊富。電気式・ガス式を選べる機種も多く、テイクアウト専門店から大型レストランまで幅広く対応可能です。

実際、先述のファストカジュアルチェーンでは、ドイツ製の高機能モデル(例:RATIONAL iCombi Pro)を店舗規模に応じて導入。これにより、全店で同じ品質の料理を提供できる体制を確立しました。

 

■まとめ

スチームコンベクションオーブンは、

  • 限られた厨房スペースで多様なメニューを展開
  • 調理スピードと品質の安定化
  • 清掃や温度管理の自動化による人件費削減

といった効果をもたらし、飲食店経営の大きな武器となります。
特に小規模店舗や多店舗展開を目指す事業者にとっては、厨房の生産性を飛躍的に高める「ゲームチェンジャー」といえる存在です。

テクノロジーを活用した厨房改革は、これからの外食産業の成長戦略において欠かせない要素となっていくでしょう。

 RESTAURANT BUSINESS Jul. 22, 2025より引用

 

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