第546話「外食業界にM&A旋風!ケンタッキーと資さんうどんが描く再編の未来」

飲食業界にマネーの波が押し寄せている。2024年には、外食M&A(合併・買収)の件数が前年比44%増の85件と5年ぶりの高水準に達し、注目を集めた。特に“ケンタッキー”こと日本KFCホールディングスの買収は、過去最高の取引総額となる約1,346億円となったことが話題だ。これは業界における大型案件として、構造変化への一端を象徴している。

ケンタッキー買収の背景と狙い

この買収は、米投資ファンドのカーライル・グループによるもので、その巨額投資の背景には、以下のような戦略的意図があると見られている:

  • ブランド力を活かした積極的出店の推進
  • メニュー多様化やチャネル拡大による収益強化
  • デジタル戦略への重点投資

これに加え、コロナ後の業績回復やインバウンド需要、金融緩和政策、円安傾向などが追い風となり、投資資金が外食業界へ流れ込む好環境が整ったと言える。

ローカルチェーン資さんうどんも注目のM&A対象に

一方、すかいらーくホールディングスが展開する資さんうどんは、北九州を拠点とするローカルチェーンとして70店舗ほどの規模ながら、2024年10月に約240億円という、M&Aとしては破格の金額で買収された。

すかいらーくHDは、「資さんが長年愛されてきた味やサービスを守ること」を明言しつつ、この買収を通じて西日本エリアへの展開を加速させるという戦略を打ち出している。実際、北九州発の資さんうどんは2025年2月に東京・両国に1号店を開業しており、今年中には74店舗から210店舗へと拡大する計画が進んでいる。

M&A増加の背景にある業界構造の変化

こうした大型M&Aが増えている背景には、以下のような構造的要因があると考えられる:

  • 金融緩和による資金供給の潤沢化:日銀の緩和政策が続き、M&Aの資金的土台が安定している。
  • コロナ禍からの回復とインバウンド需要の拡大:外食業績が改善し、観光客の需要も回復した。
  • 円安による海外投資家の買い圧力:為替の動きが、外国ファンドにとって投資妙味を高めた。
  • 再編による業界の効率化と存在感強化:競争激化の中、規模拡大や経営資源の集約を意図したM&Aが進行。

規模・地域性の枠を越える「資さんうどん」の存在感

すかいらーくHDは、大手ファミレスチェーンが保有する広域な経営資源を活かしながら、地域密着型ブランドである資さんうどんの良さを尊重し融合させる方針だ。この“地方の強みを全国ブランドに育てる”戦略は、業界再編のなかで一つの成功モデルとして注目されている。

今後の展望:さらなる再編と進化の可能性

ケンタッキー、資さんうどんに続き、サンマルクホールディングスによるジーホールディングス(GHD)の子会社化(取得額112 億円)なども進行中で、訪日客への対応や海外進出を見据えた動きが継続している。

外食業界を取り巻く環境は、コロナ後の反動や国際的な資本流入、業種を超えた競争などから、再編のフェーズに入っている。今後も、大型M&Aや戦略的提携が業界の潮流となりそうだ。

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