第332話 鳥貴族の挑戦「トリキバーガー」をみる
居酒屋の鳥貴族がチキンバーガー店「トリキバーガー」を展開すると宣言した。
日経MJでも鳥貴族ホールディングスの大倉社長は「あとの外食人生はバーガーにかける」と言い切っていると伝えています。コロナ禍で業態転換を目論む経営者が多い中、片手間でない本気の多角化の取り組みが多くの企業に思慮を与えると言い切っています。
このインタビューの中で2〜3年前からバーガー事業への参入を検討してきた。コロナ前の米国の視察から多くの影響を受けたと語っている。
確かに昨年のアメリカのテクノミックスのトップ500社売り上げランキングでも主要な鶏肉のアイテムはコロナ禍の間に大きくプラスに成長している。
2020年を振り返ると外食研究家が「フライドチキンサンドイッチの年」と呼ぶのは間違いではないとレストランビジネスが伝えています。
大倉社長もアメリカのこの状況を目にされたのだと思います。
確かに現在でもアメリカのバーガーチェーンが日本進出を目論んでいる話はよく耳にします。そして日本市場に関しての問い合わせも調査会社を通じてきています。
そしてすでに上陸の準備をしているチェーンも動き出しています。何より米国で最も人気のブランドはまだ日本に進出していないわけですから。
そして、鳥貴族がバーガー事業を立ち上げる大きな要因となったのは居酒屋の「鳥貴族」がいずれ日本では飽和状態になる。海外展開、新業態の模索の中で先出の米国の状況を見て決断されたようだ。
これは、現在のナショナルチェーンと言われる大手外食が抱える大きな課題を表していると言える。それに対する大倉社長なりの答えであったようだ。1000店舗を超えるチェーン店はほとんどのブランドは自店間競合を起こしている。第二の柱を持つことができないとジリ貧になることは目にみえている。特にフランチャイズシステムをとっているブランドは出店余地がなくなると、加盟店は他のブランドに加盟して自社の成長を目指します。その時に新しい乗り物を提供できるかは大きな課題としてのしかかっており、各社取り組みに拍車をかけています。
現在鶏肉を扱っているだけに具材もチキンに特化して専門性を出そうとしている。
レッドオーシャンであるバーガー市場にあえて参入する意味を「たしかにビーフハンバーガー市場に参入する余地はないでしょう。チキンバーガーを専門に扱い、鳥貴族が運営することで、お客様に期待してもらえる部分はあると思っています」『チキンフードといえば鳥貴族グループで』と思ってもらえるようなブランドにしたいと抱負を語っている。
新業態をやるからには、経営者自らが魂を入れて取り組まないと育ちません。経営者の魂が入っていないと、一緒に働く社員にも気持ちが伝わるものですから」
「今後は私の気持ちはトリキバーガーを中心に行きたいと思っています。第2の創業のつもりで取り組みます。あとの外食人生を、バーガー事業にかける覚悟です」と意気込みを語っています。
マクドナルドと同じ市場でぶつかることになりますがとの質問に
「出店する際にベンチマークとする立地はやはり、マクドナルドです。ただコロナの収束後は、郊外やロードサイドに向かっていた消費者が都心に戻るでしょう。ビジネス街はあまり戻らないかもしれませんが、繁華街は戻ってくると思います」
「テークアウトやデリバリーも今がピークだと見ています。コロナ前と比べてこうしたサービスは根付きますが、お客さんは店内にも戻るとみています。トリキバーガーでいえば、テークアウトやデリバリーをこなしながらも、都心立地への出店は重視していきます」と語っています。
この取り組みが成功されることを願って応援したいと思います。
もし懸念事項があるとすれば一つはチキンバーガーというチキン商材に偏ることです。アメリカのバーガーチェーンもフライドチキンサンドイッチが大きなウエイトを占めたものの通常のバーガーもあり
メニューのひとつとしてのフライドチキンサンドイッチであることです。チキンというエンジンだけでどこまでお客様を満足させられるか商品開発の手腕が問われるところでしょう。
二つ目はアメリカでもフライドチキンサンドが売れた原動力に郊外型の店舗があります。ファーストフードで拡大する時に出店戦略的に出店チャンネルを駆使し特にフリースタンド郊外型のドライブスルー店舗は不可欠です。鳥貴族の中では経験が少ないであろう出店チャンネルをどこまで展開できるか重要なポイントです。都心立地は大きな売り上げが期待できるものの多くの客席が求められ、賃貸面積も大きく家賃コストが過大にならざる得ないことが大きな負担となることの懸念も考えられる。
三つ目はファーストフードは無駄を削ぎ落としたビジネスモデルです。これからその原動力となるのはテクノロジーの進化です。多くのASP(アプリケーションサービスプロパイダー)、とクラウドをいかに駆使できるかが効率化の要になります。思い切った次世代型のファーストフードを是非試行して欲しいものです。
日本のバーガー市場は思った以上に大きいように思います。
この取り組みは社内で働く人への大きな刺激となり更なる活性化をうむ効果は大きいと思われる。
大倉社長のこのチャレンジに大いにエールを送りたいと思います。