第338話DXが脚光を浴びる3つの理由

前回に引き続きDXに関してFUJITSU JOURNALに掲載された日経BP総研 上席研究員

木村知史氏のレポートからお送りします。

DXは、すでに先進企業では取り組みが進んでいます。今年2月、富士通が世界9カ国、900人のビジネスリーダーに対して行った調査では、実に87%のビジネスリーダーが、過去3年以内にDXの検討、試行、実践を行ったと回答しています。さらに金融業の企業では47%、運輸業の企業では45%がDXを実践し成果を出したと回答しました。

 

DXが脚光を浴びている3つの理由について考察します。

1つ目の理由は、経済産業省が指摘しているように、既存のレガシーシステムの延長では企業の成長に限界が見えているからです。既存のシステムは、多くの場合は自社内に物理サーバーを設置するオンプレミス型のシステムです。いくら使い慣れているシステムとはいえ、そのままの機能を使い続けるにしてもメンテナンス費の負担が続き、機能を拡張しようと思えばコストを膨大にかけなくてはなりません。一方で、クラウドやIoTなどのデジタル技術は急速に進化しており、自社にすべてを持つことなく、比較的安価にシステムが構築できる環境になっています。まさに今、これらの技術を活用して、変革を起こすシステムを考える時期に来ているといえます。

 

2つ目の理由は、消費者の消費活動の変化です。「モノ」から「コト」、そして「所有」から「共有」へと、消費者の気持ちの重きが変わっています。例えば、「カーシェアリング」の登録者数が増加しているのは、クルマを所有するということに価値を見出すのではなく、クルマを利用することで得られる体験に価値を見出しているからにほかなりません。単に「モノ」を売るのではなく、「コト」を提供することにシフトするためには、当然、企業としてのビジネスモデルを変える必要があり、情報システムの見直しも必要となります。

 

そして3つ目の理由は、すでにいろいろな分野でデジタル化による変革は起きていて、それに対抗するための有効な手段がDXによる施策だということです。デジタル技術によって既存のサービスやビジネスモデルが破壊・再構築されることを「デジタルディスラプション」と呼びますが、デジタルディスラプションは主には新規参入者によってもたらされます。例えば、米ウーバーテクノロジーズは一般のドライバーをタクシーサービスに登用することでタクシー業界にデジタルディスラプションを起こしました。米エアビーアンドビーは一般家庭の空き部屋を旅行者に開放することでホテル業界にデジタルディスラプションを起こしました。

これらは、デジタルディスラプションとして非常にわかりやすい例ですが、デジタルディスラプションは程度の差はあれ、多くの業界で起きています。そして、デジタルディスラプション後の再構築されたビジネス環境の中で、競争力を維持するためには、DXによって、自らもデジタルディスラプションを起こしていかなくてはならないのです。

 

新しいデジタルソリューションにより、既存の製品やサービスが駆逐され、高性能、利便性のある新しい製品やサービスに置き換わることです。

従来のディスラプションと言えば、製品やサービスの開発に膨大なコストを必要としました。

そのため、近年に比べてディスラプションを起こせる企業の数は多くはありませんでした。

しかし、インターネットやスマートフォンといった既存のプラットフォームを活用することで、製品やサービスを昔ほどコストをかけずに開発する事ができるようになり、多くの企業がデジタルディスラプションを起こすようになりました。

次回はDXを支える新しいテクノロジーに関して報告します。

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