第367話 食材高騰と多店舗展開

コロナ禍で流通の滞り、そしてガソリンの値上げによる輸入食材の値上がりが昨年暮れから指摘されてきたが、ここにきてウクライナ情勢の悪化が拍車をかけているようだ。

 

多くの企業が耐えきれず値上げに踏み切っている。その様子をJIJI.COMがメディアの発表を伝えているのでその一部をご紹介しよう。

農林水産省は9日、政府が買い付けて国内の製粉業者に売り渡す輸入小麦の価格を4月1日から17.3%引き上げると発表した。1トン当たり7万2530円で、現在の算定方式となった2007年以降では、08年10月の7万6030円に次ぐ過去2番目の高値水準。ただ、深刻化するウクライナ情勢や対ロシア制裁の影響は一部しか織り込んでおらず、次の価格改定が行われる10月以降はさらに高騰する可能性が強まっている。

売り渡し価格の大幅上昇は、干ばつによる北米産の不作などを背景とした穀物相場の高止まりが主因。既に値上げが相次いでいるパンや麺類の小売価格を、夏ごろから一段と押し上げる要因となる。

輸入小麦の売り渡し価格引き上げで、小麦を原材料とする食品への影響は必至だ。コロナ禍からの経済回復などを背景に、既に食品の多くが値上げされており、食卓にとってさらなる打撃となりそうだ。

製粉大手の日清製粉(東京)は、食品メーカーや外食企業への小麦粉の販売価格引き上げを検討すると明らかにした。
歯止めがかからない原料高騰に食品関連企業は頭を抱える。ある洋菓子メーカーは味や品質を落とさずに商品を販売するため、工程を細部にわたって見直すなどコスト削減に知恵を絞る。担当者は「企業努力は限界に近づいている」と悲鳴を上げ、原材料価格がさらに上がれば値上げも考えざるを得ないという。製パン大手は「コストアップの額を精査し、消費者や小売店に受け入れてもらえる対応策を検討していく」と話した。
ロシアのウクライナ侵攻に伴う混乱の収束は見通せず、影響が長期化する恐れもある。外食大手は「値上げは簡単にできないが、検討する局面が来るかもしれない」と身構える。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏は「原材料だけではなく物流費も上昇しており、この先も半年から1年程度は食品の価格上昇が見込まれる。消費者にとっては打撃となるだろう」と指摘する。

日本マクドナルドは4日、ハンバーガーなど約2割の品目を値上げすると発表した。小麦や牛肉といった原材料価格の高騰や物流費の上昇を受け、14日に店頭販売価格を10~20円引き上げる。値上げは2019年10月の消費税増税時以来約2年半ぶり。

「ハンバーガー」が110円から130円、「チーズバーガー」は140円から160円、「てりやきマックバーガー」は340円から350円となる。セットメニューは原則、単品の値上げ幅に応じて引き上げる。宅配向けも値上げする。
一方、「ビッグマック」や「マックフライポテト」、おもちゃが付いた子ども向け「ハッピーセット」、平日昼の「バリューランチ」は価格を据え置く。

ローソンは8日、小麦など原材料価格の高騰や物流費の上昇を受け、サンドイッチやおにぎりなど約50品目を値上げしたと公表した。セブン―イレブンやファミリーマートも一部商品の価格を既に引き上げており、幅広い客層を持つコンビニエンスストアにも値上げの波が広がりつつある。

ローソンの値上げ対象には麺類やすし、サラダも含まれる。上げ幅は2~14%程度で、「たまごサンド」は228円から246円になった。セブンは2日以降、サンドイッチの6割超(首都圏の場合)を順次値上げ。上げ幅は5~12%前後で、パン生地などの品質向上に伴うコスト上昇分も含むという。
ファミマも先月、調理済みパスタの一部をリニューアルして5%ほど値上げした。

コロナ禍による物流の停滞とガソリン価格の上昇そしてウクライナ紛争と多くの災難が一気に押し寄せている感がある。この状況にどう対応するか、企業の存続が問われている。

 

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