第406話 高級食パンの終焉が意味するもの

「乃が美」の後に続き多くの高級食パン専門店が出店をし、高級食パンの新鮮味がなくなり、今急激に閉店に向かっている。オープンして半年で閉店というケースまで発生している。

2018年ごろからの高級食パンのブームが終わりを迎えているとメディアでも盛んに報じている。

 

ある専門家は同じブームとなり閉店ラッシュとなったタピオカやパンケーキに比べると世間の風当たりが強いと言っています。

TV番組でも批判的な放送が多い、そして逆に激安スーパー、激安グルメが取り上げられて企業努力がすごいと持ち上げている。

ワインとかチーズとかでも安価品もあれば高級品もしっかりと支持されている、なのになぜ高級食パンが目の敵にされるのかと疑問を呈している。

 

前出の専門家曰く、変な名前のパン屋が悪目立ちしてしまったのも要因の一つではと分析している。

この変わった名前の高級食パン店は注目されて目立つことで、SNSや口コミで大きな話題となり宣伝費もかからないことが特徴であった。そのことが裏目となっている、閉店した時も注目を集めていただけに落差も大きく大したことなかったんだと、看板倒れになってしまっている。

 

つまり、「変な名前」によって得ることができた話題性や「面白い!」という好意的なクチコミという好循環が、ブームが下火になったことでそのまま「逆回転」しているのだ。

と分析している。

 

さらに高級食パンへの世間の風当たりの強さの原因は「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」という日本社会の暗黙のルールがあるのではないか。

一般の食パンの5倍近い価格は流石にぼったくりだと感じてしまう。

 

2014年から2021年まで8年連続で1世帯あたりのパンの支出額がお米の支出額を上回っているという事実がある。

なぜこうなるのかというと、日本人の3割を占める高齢者が米食からパン食に進んでいることが大きい。ご高齢の親などがいる人は分かるだろうが、実はシニアほどよくパンを食べている実態がある。家計調査をみると、最も食パンを購入している単身世帯では、34歳以下よりも60歳以上の高齢者のほうがかなり多いとのことです。

また、他の真面目なパン屋と比べてもそこまで劇的に味が変わるわけでもないと思う人も多い様です。

 

一方で『高級米』も大苦戦しているという、全国各地の高級米がコシヒカリに肩を並べるべく登場しました。

『ブランド米が乱立するなか、数年前に出たある銘柄について「なかなか売れなくて困る」と打ち明ける小売店や卸が少なくない。都内の複数のスーパーでこの銘柄の精米日を確かめてみると、1カ月たっている袋もあった。しかし、袋の裏側には「精米から2週間程度が鮮度の目安」などと書いてある』

このように人気はかんばしくなかったが、スーパーや小売店はブランド米を撤去もできず値下げもできない。記事中に登場した大手コメ卸幹部によれば、「県や代理店からブランド力を維持してほしいとの要請が強い」そうで、「我慢比べ」の状態だという。

つまり、米の生産量が大きく落ち込む中で、自治体が生産者の生き残りを目指して、付加価値向上を目指したわけだが、結局「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」という日本社会の暗黙のルールの前に「大苦戦」をしていたというわけである。

「高級食パン」という新たなジャンルで付加価値の向上を目指したものの、結局「高すぎる」「ぼったくりだ」と閉店続出に追い込まれている今のパン業界と同じことが起きていたのだ。と伝えています。

コシヒカリなど高級ブランド米と同じく、「嵜本」「乃が美」という高級食パン専門店も、こぞって海外進出を目指している。現状ではまだなかなか難しい戦いではあるが、高級米や高級食パンが生き残っていくには、日本よりも賃金が順調に上がっている欧米、中国、台湾、東南アジアなどに標的を絞ったほうがよほど未来はある。

「高すぎる」「ブームはおしまい」なんて感じで、「高級食パン」をディスっている人も多いが、あと10年もしたら「高級食パン」側から見捨てられているのは、「安いニッポン」で貧しくなっているわれわれのほうかもしれない。
とこのレポートは結んでいます。

 

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