第415話(米国最新事情) 人気ユーチューバーのバーガー店のその後

今世界で最も登録者数の多いユーチューバーをご存知だろうか。日本では登録者数が多いユーチューバーでも1110万人ほどだが、世界になると桁が一つ変わってくる。なんと1億3千万人の登録者を抱えている。

ミスタービースト(MrBeast)ことジミー・ドナルドソンは世界で最も登録者数の多いユーチューバーと言われている。

その彼が手がけた外食フォーマットがミスタービースト・ハンバーガーだ。

昨年の9月に実店舗をショッピングモールにオープンし話題となった。オープン当日なんと1万人以上がつめかけて話題となった。半年経った今でも店外まで行列が出来ているとの事です。

2020年12月に1号店を開店したがなんと実店舗を持たないミスタービースト・ハンバーガーだ。

いわゆるゴーストレストランとしてスタートをしている。

パートナー店舗のキッチンで調理するデリバリー店舗としてスタート。コロナ禍にも売り上げを伸ばし、オープンからわずか7ヶ月で1億ドルを稼いだと報じられていた。

このコンセプト成功について日経MJが伝えている。

人気ユーチューバーのお店であることが大きいが、できるかぎりコストをかけずにゴーストキッチンとしてデリバリーのみでの営業であること。2020年の実験店舗オープン時にアプリも導入、ユーチューブを使って自身が宣伝することでアプリのダウンロード数でトップとなっているのだが、並行して他の外食企業と提携してゴーストキッチン全米300カ所からの宅配とピックアップを可能としたのである。資料によるとゴーストキッチンはその後さらに増やしてグローバルに1700カ所に拡大したとされている。

これは今までの常識的な出店戦略が根底から変わりつつあることを示唆している。コストがかかるリアル店舗は最小限にし、ゴーストキッチンを利用して拡販することが可能となった。即配とピックアップが普及して一般化したからできる新しい時代の戦略だ。

ちなみに人口密集地で出店しづらい商圏にはゴーストキッチンで進出する外食チェーンは出てきている。米食品スーパーのクローガーは店舗がないフロリダにフルフィルメントセンター(物流施設)を建設して宅配のみで進出している。

2つめはモールの集客に対して外食が大きく寄与することが鮮明になった点である。私の記憶では外食店舗のオープニング時に1万人を集めたモールは他にない。モールが物販ではなく非物販へと戦略的にシフトしている、その典型例と言えるだろう。

例えばニューヨークの大型モールのハドソンヤードは、著名シェフの監修によるフードホールを運営している。名称はメルカド・リトル・スペイン。スペインの市場をイメージして設計されており、入り組んだ動線やにぎやかなデザインなど、いわゆる一般的なフードコートではない。

フードホールを導入するモールが増えつつあることもすでに書いたが、著名シェフというインフルエンサーが存在するという点はミスタービーストと同じだ。フードホールそれ自体が集客力を持っており、買い物の途中で飲食しながら休憩する場所として機能してきたフードコートとは、役割が変化している。

前者のゴーストキッチンはバーチャル、後者のモール集客はリアルと、非常に対照的で、ユーチューバーがそれを実現して見せたところに面白さを感じている

と締めくくっている。

人気ユーチューバーが手がけた事が話題となったが、今回のレポートのようにショップインショップ型のゴーストキッチンの威力を感じさせる。日本でも多くのコンセプトが誕生しているが飲食店経営者も研究してみる価値のあるビジネスモデルと言えそうです。

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