第456話 ”ソバーキュリアスの波: 若者たちの新しいライフスタイルと酒類業界の変革”

「ソバーキュリアス」とは、アルコールを飲む能力があるにもかかわらず、あえて飲まない、または少量のみ飲むという生活スタイルを指します。この言葉は「Sober(しらふ)」と「Curious(好奇心が強い)」を組み合わせた造語で、2019年頃に欧米で流行し、新型コロナウイルスの感染拡大期に日本でも注目されるようになりました。特に1990年代半ば以降に生まれたZ世代に人気があります。

このライフスタイルは、健康上の理由や宗教上の理由による禁酒や断酒とは異なり、より柔軟な考え方に基づいています。例えば、飲み会ではノンアルコール飲料やソフトドリンクを選ぶ、自宅での夕食時にビールの代わりに炭酸水を飲むなどの選択が含まれます。このライフスタイルには、睡眠の質の向上、肌の健康、作業効率のアップなどのメリットがあるとされています。さらに、生活習慣病のリスク軽減や出費の削減も期待できます。

日本の若者のアルコール離れは以前から進んでおり、アサヒ飲料の調査によると、20代では「飲まない派」が51.9%と「飲む派」を上回っています。ソバーキュリアスの認知度はまだ低いものの、その考え方に賛同する人は多く、今後さらに広がる可能性があると記事は示唆しています。

酒類メーカーはこのトレンドを受け入れ、ノンアルコール飲料の開発に力を入れています。アサヒビールは「スマートドリンキング」、キリンは「スロードリンク」、サントリーは「ドリンク・スマート」といったキャンペーンを展開し、ノンアル派の取り込みを図っています。また、居酒屋チェーン「塚田農場」はノンアル飲料のラインアップを大幅に拡充し、ソバーキュリアスの流れに乗り、下戸にも楽しんでもらえる店を目指しています。

サントリーの林正人常務執行役員は、健康志向の高まりを受け入れ、味わい深いノンアル飲料で酒の文化を楽しんでもらうことを目指していると述べています。ノンアル飲料市場は急拡大を続けており、2022年の市場は2009年比で約6倍に増えると推定されています。

この「あえて飲まない」傾向は若者だけの話ではなく、60歳以上の層でも増えているとされ、今後も続く可能性が高いと見られています。

 

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