第483話デフレの象徴、外食産業で10%以上の賃上げ続出と4月実績

外食産業で10%以上の賃上げが相次いでいます。「すき家」などを展開するゼンショーホールディングス(HD)に続き、うどんチェーン店「丸亀製麺」などを運営するトリドールHDも2024年6月分から平均10%の賃上げを実施します。トリドールHDの創業者、粟田貴也社長は「『お客様にとって良いことをしたい』という内発的動機を働く人が持つことが非常に大切。報酬はその方策の一つです」と語っています。

トリドールHDの賃上げは、子会社5社を含む正社員1549人が対象で、ベースアップと定期昇給を合わせて平均10%。労働組合の要求を上回り、過去最大の賃上げ幅となります。ゼンショーHDは正社員平均で12.2%の賃上げを実施しました。

粟田社長は「安値競争は食材や人件費にしわ寄せが来て、誰も得をしない不毛な戦い。長年のデフレ傾向がそういう土壌を作ってしまった」と振り返り、「従業員の幸せとモチベーションを高く維持するために、組合の要求を上回る賃上げを実施した」と述べています。

 

<外食市場4月の動向>

  • 訪日外客需要などで売上堅調だが、物価高騰が実質成長の勢いを削ぐ


<全体概況>
4月は全国的に桜の開花が遅れたことで花見需要が昨年より増え、また春の歓送迎会の後押しもあり、外食全体の売上は前年比106.0%、19年比115.1%となった。全国各地では国内外からの観光客の消費が活発であったが、コロナ禍が明けて一年近くが経つ現在、物価高騰が続き、低価格重視の消費志向が高まる傾向にあり、利益を伴う売上増はおおむね前年ほどではない。

 

<業態別概況> 

ファーストフード業態

 FFは引き続き好調で売上105.4%、19年比では128.6%となった。

「洋風」は、割引キャンペーンの集客が従前に及ばなかったものの、高付加価値メニューの好調で売上104.3%。

「和風」は、販促キャンペーンやお得メニューの充実で夕食需要が高まり、売上106.7%。

「麺類」は、人気メニューの店頭訴求などが奏功し、売上110.2%となった。

「持ち帰り米飯/回転寿司」は、客単価が伸びて、売上は101.3%となった。

「その他」は、4月の高温傾向の中で「アイスクリーム」が好調で、売上111.4%となった。

ファミリーレストラン業態

FRは全体売上107.0%、19年比では106.1%となった。
「洋風」は、注文するメニュー品目数の増加などで客単価が上昇、売上は109.2%となった。

「和風」は、歓送迎会や花見に一定の需要があり、売上106.9%となった。

「中華」は、販促キャンペーンの展開で好調を維持し、売上107.7%。

「焼き肉」は、昨年比で休日数が減少し客数も減少、昨年の販促キャンペーンの反動などで、売上98.9%となった。


パブ・居酒屋業態

「パブ・居酒屋」は、「パブ・ビアホール」で週末の天候不良が若干影響したが、人流の回復傾向や年度初めの歓送迎会の需要で、売上105.7%、19年比で69.1%となった。

 

ディナーレストラン業態
花見需要のずれ込みで、訪日外客をはじめとした利用客と客単価が増加し、売上は103.5%となった。

喫茶業態 

客数の回復が堅調で、大型商業施設や観光地などで継続して売上が伸び、季節メニューの好評とあいまって、売上108.6%となった。

 

 

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