第489話 外食業界における価格変動システムの導入:深夜料金とダイナミックプライシング

外食の新たな価格戦略の動きを日経新聞が伝えています。

外食業界の新たな試み 2024年7月16日から、松屋フーズホールディングス(HD)が運営する牛丼チェーン「松屋」の一部店舗で、深夜料金が加算されます。また、TOPPAN HDは、時間や混雑度に応じて価格が変動するダイナミックプライシング(DP)システムの実証実験を開始し、2024年度中に外食店への販売を目指しています。これにより、外食業界の価格戦略が大きく変わり始めています。

松屋の深夜料金導入 松屋フーズは、午後10時から翌日午前5時までの間、商品の価格に7%を加算する深夜料金制度を導入します。この新制度は、1都6県にある松屋ととんかつ専門店「松のや」の723店舗で実施されます。同社は既に5月から約100店舗で試験導入を行い、顧客離れが少ないことを確認した上で、今回の本格導入を決定しました。

すき家の先行導入 ゼンショーHD傘下の牛丼チェーン「すき家」も、4月から深夜料金制を導入しています。こちらも、午後10時から翌日午前5時までの間、商品の価格に一律7%を加算する仕組みです。導入後も客数が前年同月比で2%以上増加しており、利用者からの理解も得られているとのことです。

ダイナミックプライシングの普及 航空業界で一般的なダイナミックプライシング(DP)は、今後外食業界にも広がる可能性があります。TOPPAN HDは、デロイトトーマツグループと提携し、混雑状況に応じてポイントを付与し、実質的に割引を行うDPシステムを千葉県船橋市の居酒屋や埼玉県狭山市のカフェで実証実験を始めました。このシステムは、店内の混雑度や気象情報、曜日、時間帯をAIで予測し、ポイント還元率を調整します。過去の実証実験では、外食店の売上高が最大20%増加したとのことです。

ファストフード業界の時給上昇 外食業界の価格戦略の変化には、人件費の高騰が背景にあります。リクルートの調査によると、2024年6月のアルバイト・パートの募集時平均時給は、外食を含む「フード系」の三大都市圏で前年同月比3%増の1147円となり、特にファストフードの平均時給は4.9%増の1179円と最も高い伸びを示しました。

消費者の理解と課題 プライシングスタジオの高橋嘉尋CEOは、「時間によって価格が異なる仕組みは外食業界にはまだ根付いていないため、消費者の納得を得ることが課題」と指摘しています。米国ではファストフード大手のウェンディーズがDPを導入する方針を示した際、一部の消費者から反発を受けました。高橋氏は、「待ち時間の短縮や限定商品の提供といった付加価値の提供が必要」と話しています。

外食業界は、食材や人件費の高騰に対応するため、新たな価格戦略を模索しています。深夜料金やダイナミックプライシングの導入は、その一環として注目されており、今後の展開が期待されます。

 

 

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