第510話 米価高騰の背景とその要因:私たちの食卓を揺るがす現状

2024年現在、日本の食卓の中心であるお米がかつてない価格高騰に見舞われています。新米シーズンにもかかわらず、消費者の買い控えが続き、米不足が懸念されています。米価高騰の原因は何か、どのように解決するべきかを考えてみましょう。

  1. 天候不順による収穫量の減少

まず注目すべきは、記録的な猛暑や天候不順の影響です。2023年、日本各地で高温障害が発生し、収穫量だけでなく品質にも影響が及びました。米粒が小さくなる、白濁する「白未熟粒」が多発し、精米歩留まりが低下しました。つまり、同じ量の玄米から取れる白米が少なくなっているのです。

また、大量発生した害虫カメムシも米の品質にダメージを与えました。結果として、精米用の高品質な米の供給が減少し、市場での価格が急騰しています。

  1. 外食需要の急増

コロナ禍からの回復も米価高騰を後押ししています。2023年5月、新型コロナウイルスの感染症分類が見直され、外食産業が息を吹き返しました。さらに訪日外国人観光客の増加も需要を押し上げています。飲食店向けの米需要が急増したことで、家庭用の供給が逼迫する結果となっています。

  1. 生産コストの上昇

農業コストの高騰も米価を引き上げる大きな要因です。燃料費、肥料代、農機具の価格が上昇し、農家の経営を圧迫しています。農家はこれらのコストを吸収するため、販売価格を上げざるを得ません。その結果、私たちが購入するお米の価格にも影響が出ています。

  1. 減反政策と供給調整

日本では1970年代以降、減反政策が実施されています。需要に合わせた生産量の調整を目的としていますが、この政策が米価高騰の一因とも言えます。近年の減反政策では生産量が年々減少し、需給がギリギリの状態に。これにより、わずかな収穫量の変化や需要増で市場価格が大きく変動する仕組みが作られてしまいました。

  1. 備蓄米の運用問題

さらに、政府が保有する備蓄米の放出も柔軟に行われていないことが指摘されています。備蓄米の運用は食糧法に基づいており、供給が著しく不足した場合にのみ放出される仕組みです。昨年の米不足時も、作況が「平年並み」とされたため、備蓄米が市場に供給されませんでした。この制度の硬直性が供給不安を悪化させています。

  1. 今後の課題と展望

米価の高騰は、消費者の家計に影響を与えるだけでなく、農家にも厳しい経営環境を強いています。現在、政府は転作補助金などを通じて農家を支援していますが、これを廃止し、大規模農家への直接支払い制度に切り替えることが提案されています。米価が下がれば消費者の負担が減り、輸出競争力の向上も期待できます。

また、備蓄米の柔軟な運用や、輸出の拡大を通じた需給調整なども重要な課題です。さらに、減反政策の見直しも必要です。生産量を増やし、供給に余裕を持たせることで、米価の安定化を図るべきではないでしょうか。

まとめ

お米の価格高騰の背景には、天候不順、生産コストの上昇、政策の硬直性など複数の要因が絡み合っています。日本の食文化の基盤であるお米を安定供給するためには、長期的かつ柔軟な政策が求められます。

石破新首相の下で進む可能性のある米政策の見直しに期待が高まります。消費者の家計を守り、農家を支えるバランスの取れた改革が実現されることを願います。

 

 

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