第522話 カレー業界の大変革とCoCo壱番屋の挑戦
国内最大級のカレーチェーンとして親しまれてきたカレーハウスCoCo壱番屋(通称ココイチ)が、ここ最近、経営面での転換期を迎えている。2024年9月以降、同社はこれまで好調に推移していた客足が徐々に減少している現象が顕著となっており、今回の現象の背景には、度重なる値上げが大きな要因として浮かび上がる。
◆【値上げと客足減少の背景】 実は、2024年8月に実施された一部商品の価格改定が、今回の転換点と考えられる。たとえば、シンプルなポークカレー(ライス300g)は、主要都市では591円から646円へ、その他の地域では570円から646円へと値上げされた。さらに、45種類中50種類のトッピングも平均約13.5%の値上げが行われ、カレーと合わせると支払額はさらに膨らむ仕組みになっている。これにより、「1000円超えは当たり前」との声や、牛丼チェーンのカレーがよりリーズナブルだという意見が増え、特に地方部など賃金が低い地域では、その影響が顕著に現れている。
◆【かつての“値上げ優等生”からの転落?】 過去、ココイチは断続的な値上げを行っても客足が落ちず、むしろ2024年2月期決算では前期比30.5%増の約47億円の営業利益を達成し、「値上げしても行きたい店」としてのブランドイメージを確立してきた。しかし、今回の一斉的な大都市基準の値上げやトッピングの値上げが、従来の消費者心理を覆し、実際に客足の減少という結果を招いた。専門家は「消費者側が上昇する価格に追いつけなくなっているのではないか」と指摘しており、値上げの限界に直面している様相がうかがえる。
◆【激化するカレー業界の競争環境】 一方で、カレー業界全体も変革の時を迎えている。牛丼チェーン各社は、既存のメニューにカレーを取り入れ、松屋の「マイカリー食堂」など、価格面での強みを活かす店舗展開が進んでいる。例えば、松屋のプレーンカレーは税込530円、すき家や吉野家のカレーもそれぞれ税込490円~465円と、ココイチに比べて圧倒的に安価だ。さらには、ネパール人が経営する「インネパ」と呼ばれるインドカレー店が、税込800円前後でナン食べ放題を付けるなど、低価格ながら個性を打ち出す店舗も増加しており、価格競争が激化する中で、従来の「大衆的なカレー」の位置付けが危うくなっている。
◆【リブランディングへの試みと今後の展望】 こうした状況下で、ココイチは単なるインフレ対策としての値上げではなく、「高付加価値」の商品提案によるリブランディングを模索している。決算説明会資料でも「高付加価値の商品提案」として打ち出されており、今後は従来の家庭的で安心感のある味わいに加え、より魅力的で個性的な新メニューの開発や、レギュラーメニューの改良を通じて、消費者に『値段に見合う』と納得してもらえる商品展開が求められる。もちろん、今回の客足減少は一時的な成長痛とも捉えられるため、今後のメニュー刷新やサービス改善により再び客層を取り戻す可能性もある。
◆【まとめ】 現代の外食業界においては、インフレや原材料高騰の影響から、値上げは避けられない現実だ。しかし、単に価格を上げるだけでは、消費者の期待や生活環境に応えられず、他チェーンとの差別化が求められる。ココイチの事例は、かつて「値上げ優等生」として成功を収めた戦略も、時代とともに変化する市場環境の中で再考が必要であることを示している。今後、ココイチがいかにして高付加価値カレーを実現し、競争激化する業界で独自のポジションを確立できるのか、その戦略の行方が注目される。
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引用元:東洋経済オンライン(Yahoo!ニュース掲載)
このような業界全体の変容と企業の挑戦の様子は、今後の外食産業の潮流を占う上でも重要な示唆を与えている。読者の皆さんも、次回の来店時にはメニューだけでなく、その背景にある戦略や市場環境について考えてみてはいかがだろうか。