第549話 セブンイレブン、世界進出を本格化! 宅配とPBで勝負に出る理由とは?
コンビニ業界の巨人、セブン&アイ・ホールディングスが新たな成長戦略に舵を切っています。スティーブン・ヘイズ・デイカス社長は、「我々はもはやコングロマリットではない」と明言し、コンビニ事業を中核に据えたグローバル戦略を加速させる意欲を語りました。注目されるキーワードは「宅配」「PB(プライベートブランド)」「海外出店」です。
宅配「セブンナウ」でデジタル強化
デイカス社長は、国内外のデジタル化と宅配需要の高まりを踏まえ、「セブンナウ」に本腰を入れる方針を示しました。特に中国のように、店舗が宅配の拠点として活用される動きが広がる中、他社の動きが鈍い分野で競争優位を築けるとしています。
PBと出来たて商品で収益力を強化
北米市場では、PB商品の利幅がナショナルブランド(NB)よりも約18%高く、収益面での柱になりつつあります。さらに、店内調理のベーカリー商品など「出来たて」の商品を充実させることで、顧客満足度とリピート率の向上を目指しています。
EPS2.4倍計画の裏にあるロジック
2030年度までに1株あたり利益(EPS)を2024年度比で2.4倍にする計画についても、「単なる目標ではなく、積み上げた根拠がある」と強調。利益増加に加え、1兆4000億円の負債返済、2兆円の自社株買いにより、ROIC(投下資本利益率)を向上させ、企業価値と株主価値の両立を狙います。
欧州と南米が次の主戦場
海外展開では、特に欧州に強い関心を示しています。欧州の消費者は「品質にこだわるが価格にはシビア」という日本市場に似た特徴を持っており、セブンの業態との親和性が高いといいます。また、南米、とりわけブラジルを筆頭に、成長著しい小売市場にも進出する方針です。
現地パートナーと連携し、地域特性に合わせたビジネスモデルを構築することで、効率的な拡大を図ります。24時間営業の可否なども含め、国ごとに最適な運営モデルを選択していく考えです。
北米では買収と出店を同時進行
北米では年間の新規出店数を現在の125店舗から250店舗、さらには500店舗規模に引き上げる構想を持っています。小規模コンビニチェーンのM&Aを進め、オーガニック成長と組み合わせることで爆発的な店舗拡大を狙います。
また、日本発のたまごサンドなどは海外でも受け入れられる可能性が高く、「おにぎり」も今後の挑戦分野として言及されましたが、鮮度管理と回転率が鍵となりそうです。
日本国内は“ミニフォーマット”で開拓
国内市場では、1000店舗の純増計画を掲げ、小型店のフォーマットを活用して未開拓商圏へと進出していきます。オフィス内店舗や路面の小規模立地、自動販売機の拡充も含めて、細かなニーズを拾い上げる戦略です。ここではM&Aに頼らず、あくまで自力成長を追求します。
不透明な世界情勢にも備える
最後に、米国の関税政策による経済への影響については、「直接的な影響はないが、不況による消費意欲の減退には警戒している」と述べ、サプライチェーンの改善とコスト削減の必要性を強調しました。
おわりに
セブン&アイは今、変革の真っただ中にいます。「コンビニ専業」として世界を見据える同社が、デジタル・宅配・PB・地域最適化という4本の矢でどこまで飛躍できるのか──その動向から目が離せません。
日経MJより