第548話 猛暑が後押しした夏の外食需要:2025年7月の外食市場動向を読み解く

2025年7月、日本列島は6月に引き続き「記録的な猛暑」に見舞われ、外食業界にとってはその影響が如実に現れたひと月となりました。全体の外食売上は前年同月比108.7%と大幅に伸長。冷たいメニューや季節感のある限定商品、夏休みの行楽需要が重なり、特にファーストフードや喫茶業態において顕著な成果が見られました。本稿では、業態ごとの動向や注目ポイントを踏まえて、7月の外食市場を振り返ります。

全体概況:暑さと行楽が後押しする“夏の外食”

7月は猛暑の影響で「涼」を求める消費行動が活発化。かき氷や冷麺、冷たいドリンクなどが各所で売上を牽引しました。とりわけ月後半には夏休みが始まり、大型商業施設や観光地立地の店舗では安定した集客が見られました。

一方で、猛暑によって外出を控えるシニア層の動きも見られ、客層によって明暗が分かれた側面もあります。それでも全体としては、夏特有の需要とマーケティング戦略が噛み合い、外食産業全体にとっては追い風の月となりました。

ファーストフード:スパイシー&クールな商品で大躍進

ファーストフード(FF)業態は前年同月比109.7%の成長を記録。特に「洋風」業態では、スパイシーな季節メニューや人気キャラクターとのコラボ商品、冷たいドリンクの値引きキャンペーンが成功し、売上は111.8%まで伸びました。

「和風」業態も猛暑日の割引クーポンや冷やし麺系メニュー、うなぎなどの季節商品が好評で、売上は110.0%に。「麺類」業態では、冷たいメニューの投入が本格化し、猛暑との相乗効果で売上108.7%。「持ち帰り米飯/回転寿司」はやや低調ながらも夏休み需要で売上103.0%。「その他」では、アイスクリームが猛暑とキャラクターコラボの効果で109.5%と堅調でした。

ファミリーレストラン:季節限定メニューで夏休み客を呼び込む

ファミリーレストラン(FR)業態は、前年同月比107.6%と好調。とくに注目すべきは、各社が投入したかき氷や冷製メニュー、地域別の販促キャンペーンです。

「洋風」は108.1%、「和風」は土用の丑の日に合わせたうなぎフェアなどが奏功し109.4%、「中華」も店舗数増とキャンペーンにより107.9%と、それぞれ堅実な伸びを示しました。一方で「焼肉」は、猛暑による客足の鈍化が見られましたが、客単価の上昇が支えとなり102.4%と売上を確保しました。

居酒屋・パブ:ビール需要が猛暑で活性化

居酒屋・パブなどの飲酒業態は、ビール類の販売が好調で、売上は103.7%。7月は暑さとともに“飲みニーズ”が高まり、前月よりも客足も改善。屋外イベントや帰省に絡んだ需要もあり、夜の集客は一定の回復傾向にあります。

ディナーレストラン:平日ランチで堅実な需要を取り込む

ディナーレストラン業態では、インバウンド需要がやや落ち着いたものの、平日ランチの「お得感」が集客を下支え。売上は前年同月比105.3%と堅調でした。高級業態も昼間のライトな需要を取り込む施策が引き続き成果を上げています。

喫茶業態:冷ドリンク&販促キャンペーンが奏功

喫茶業態は売上111.6%と、全業態の中でも高い伸びを記録しました。冷たいドリンク類の強化や季節限定メニューの展開、さらに客単価の上昇が売上を押し上げました。各社が展開するキャンペーンやSNS活用による集客も、効果的に機能したことがうかがえます。

まとめ:暑さを味方につけた外食市場の7月

7月の外食市場は、猛暑と行楽シーズンの重なりを背景に、冷たいメニューや季節商品が売上を牽引しました。業態別に見ると、ファーストフードと喫茶が特に好調。一方で、焼肉や高価格帯のディナー業態では客数にやや課題が見られるものの、商品力や販促施策によって全体としては明るい結果となりました。

8月も引き続き猛暑が予想される中、外食各社の「涼」をテーマにしたメニュー展開やプロモーション施策に注目が集まります。夏のピークをいかに戦い抜くか、各業態の動向が楽しみなところです。

 

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