第558話外食産業の“人”の限界が見え始めた――令和7年版「過労死白書」に見る飲食業の働き方の課題と希望
2025年10月28日に公表された「令和7年版 過労死等防止対策白書」は、改めて外食産業が抱える“人の問題”を浮き彫りにしました。
FMDIとしても、これは単なる労務課題ではなく、「持続可能な多店舗展開をどう設計するか」という経営の根幹に関わるテーマだと考えています。
■「長時間労働の象徴」とされた店長・SV職の実態
白書によると、1か月に80時間以上の残業をしている割合は、自動車運転従事者と並び、外食産業が突出しています。
中でも深刻なのが「店長(29%)」「エリアマネージャー・スーパーバイザー(24%)」という数字。
現場を任される責任職が、最も長時間労働の渦中にある――この構造は、FC本部や多店舗経営企業が真剣に向き合うべき問題です。
私たちが支援する多店舗企業でも、「店長が疲弊して辞める」「SVが育たない」ことが拡大のボトルネックになるケースが後を絶ちません。
売上や店舗数の拡大よりも先に、“人が定着し成長できる仕組み”を整えることが、実は経営の最優先課題なのです。
■カスハラ・パワハラがもたらす「心の過労」
白書では、外食産業におけるパワハラ・セクハラ、そして近年増加している「カスハラ(カスタマーハラスメント)」にも言及しています。
特にエリアマネージャーやSVは、社内・現場・顧客の“三方対応”を迫られ、身体的にも精神的にも最も負荷の高いポジションです。
調査では「重度のうつ・不安障害の疑い」または「その兆候あり」が39%にのぼるという結果。
数字が示すのは、“組織を支える中間層”が限界にあるという現実です。
これを「個人のメンタルの問題」として片づける時代は終わりました。
本部が“現場を守る仕組み”をどう構築するか――これこそが、これからの飲食企業の競争力を分ける分水嶺です。
■「変形労働時間制」は目的ではなく“設計思想”として導入を
白書でも推奨されている「変形労働時間制」は、繁忙期と閑散期の労働時間を平均化し、全体の労働負荷を軽減する仕組みです。
しかし、FMDIの視点から言えば、制度そのものが“働き方改革”ではありません。
重要なのは、それをどのように設計し、現場運用に落とし込むかです。
例えば、
- 曜日別の売上・来店データを基にした“シフト最適化シート”の導入
- 閑散期に「教育・メンテナンス・マニュアル改善」に充てる仕組み化
- 店長が自ら労働計画を策定できる“週次レビュー文化”の定着
といった、現場マネジメント力を育てる設計が求められます。
単なる時短ではなく、「時間を再配分して価値を生む」方向へと変化させることが、真の働き方改革です。
■“人”を中心にした経営モデルへの転換を
外食産業にとって、変形労働制やDX化は“手段”に過ぎません。
本質は「人を生かす経営への転換」です。
私たちFMDIが提唱する「三位一体経営(多店舗展開×FC化×M&A)」の軸も、最終的には人が育ち、人が回る仕組みづくりにあります。
店舗が増えるほど、本部の管理はシステム的に、現場のマネジメントは人間的に行う――その両輪が噛み合ってこそ、持続的な成長が可能になります。
働き方の見直しは、単なる労務問題ではなく「ビジネスモデルの再設計」なのです。
■「過労死白書」が突きつける問い
白書が伝えるメッセージは明確です。
“もう現場の善意と根性だけでは、外食業は成り立たない”。
「頑張り続ける人」を前提としたモデルから、「頑張らなくても成果が出る仕組み」へ――。
それを実現するために必要なのは、
- 店長教育体系(22週間プログラムなど)の整備
- SVの業務設計・権限委譲
- データと人事制度を連動させたマネジメント
といった“構造的な改革”です。
FMDIは、飲食業が「人の限界」を超えて成長できるよう、
多店舗展開・FC構築・M&Aの三軸から、
現場と経営を結ぶ新しい経営モデルを提案していきます。
令和の外食経営は、「人を守る経営」が勝ち残る時代です。
