第569話 米国KFC新業態「Saucy」が示す、これからの外食モデルとは
― FMDI(フードビジネス多店舗展開研究所)坂本の視点 ―
KFCが米国で立ち上げた新業態「Saucy(ソーシー)」は、単なる新メニューや派生ブランドではありません。
これはKFC、ひいてはヤム・ブランズが、2026年以降の外食産業をどう見ているかを端的に表した“実験業態”だと私は捉えています。
Saucyとは何か? ― 極端なまでに「削ぎ落とした業態」
Saucyの最大の特徴は、驚くほどシンプルな構成です。
主役はチキンテンダー(フィンガー)とソース。サイドは最小限。
その代わり、ソースの種類と組み合わせで数千通り以上のカスタマイズが可能とされています。
ここで重要なのは、「何を増やしたか」ではなく、
「何を捨てたか」です。
- メニューの幅は広げない
- 調理工程を重くしない
- ファミリー需要を狙わない
その代わりに、
「選ぶ楽しさ」「自分好みを作る体験」に全振りしています。
なぜ今、KFCはSaucyを作ったのか
背景には、明確な環境変化があります。
一人客の増加、間食・スナック需要の拡大、
そして「満腹」よりも「気分が上がること」を求める消費行動。
Saucyは、
「今日はがっつり食事をしたい」ではなく、
「ちょっと楽しいものを、自分の気分で選びたい」
というニーズに正面から応えています。
特にソースという存在は秀逸です。
ソースは原価管理しやすく、差別化しやすく、
しかも“語りたくなる体験”を生みやすい。
KFCはここで、
商品ではなく“選択構造”を売る業態に踏み込みました。
FMDI視点①:これは「商品開発」ではなく「業態設計」
多くの飲食店がやりがちなのは、
「新商品を出す」「トッピングを増やす」という発想です。
しかしSaucyは違います。
・商品点数を減らし
・主役を1つに絞り
・選び方そのものを価値にした
これは業態そのものの再設計です。
多店舗化・FC化で失敗する多くのケースは、
「あれもこれも足した結果、複雑になりすぎる」こと。
Saucyはその逆を行っています。
FMDI視点②:Saucyは“ミニFCモデル”の原型になり得る
Saucy型モデルは、
- SKUが少ない
- オペレーションが軽い
- 教育期間が短い
- 小型店舗でも成立する
という特徴を持ちます。
これは、日本でも今後重要になる
ミニFC・省人化・都市型小型店と非常に相性が良い。
「大きな本部」「重たいマニュアル」がなくても、
コンセプトと選択設計が明確なら、事業は回る
という好例です。
FMDI視点③:「全部やらない勇気」が競争力になる
Saucyは、
- フライドチキンのフルラインをやらない
- サイドで勝負しない
- 価格競争に巻き込まれにくい
つまり、戦う場所を自分で決めているのです。
これは、これからの外食経営において非常に重要な視点です。
人口減少・人手不足・コスト高の時代、
「全部やる店」は、最も疲弊します。
まとめ:Saucyは“未来の外食の縮図”
KFCの新業態「Saucy」は、
派手な拡大を狙うブランドではありません。
✔ 個人最適
✔ 感情価値
✔ 軽量オペレーション
✔ 実験と検証
これらを凝縮した、未来の外食モデルの縮図です。
多店舗展開、FC化、新業態開発を考える経営者にとって、
Saucyは「真似する業態」ではなく、
「考え方を学ぶ業態」だと私は感じています。
これからの外食は、
「何を売るか」ではなく、
「どう選ばせ、どう感じてもらうか」。
Saucyは、その答えをシンプルに示してくれています。
