第578話 レアハンバーグの危険性と現場の認識ギャップ

〜実体験から見えた「安全意識」の落とし穴〜

近年、外食業界では「レアハンバーグ」や「半生提供」といったスタイルが話題になることがあります。肉の旨みをダイレクトに味わえるという理由で人気を集める一方、食品安全の観点から見ると極めてリスクの高い提供方法であることは、これまで何度も指摘されてきました。

私自身、先日あるステーキ店を訪れた際に、その危険性と現場の認識ギャップを強く実感する出来事がありました。提供されたハンバーグは、中心部から血が滲むほどの明らかなレア状態。見た瞬間に「これは危ない」と感じ、従業員の方に再加熱をお願いしました。

しかし返ってきた反応は、驚くべきものでした。
「何が問題なのか分からない」というような、きょとんとした表情。

こちらが改めて依頼すると、対応として行われたのは、ハンバーグだけでなく他のステーキも含めて鉄板全体を強く加熱するというもの。その結果、料理は必要以上に火が入ってしまい、いわゆる“グタグタ”な状態で再提供されました。

この一連の流れから感じたのは、「調理技術の問題」ではなく、「安全に対する認識そのものが欠けている」という現実です。

本来、ハンバーグに代表されるひき肉料理は、中心部まで十分に加熱することが絶対条件です。ひき肉は加工の過程で表面の菌が内部まで入り込むため、塊肉のように表面だけ焼けば安全というものではありません。腸管出血性大腸菌(O-157)やサルモネラ菌などのリスクを考えれば、「赤い=危険」という認識を現場全員が共有していなければならないのです。

それにもかかわらず、今回の店舗では
・レア状態の危険性を理解していない
・再加熱の正しい方法を知らない
・顧客の安全よりも提供オペレーションを優先している

という、三重の問題が見受けられました。

FMDI坂本の視点で申し上げると、これは単なる一店舗の問題ではありません。むしろ、多店舗展開やフランチャイズ化を目指す企業にとっては「最も避けるべき構造的リスク」です。

なぜなら、安全基準が曖昧なまま拡大すれば、事故の確率は店舗数に比例して増大するからです。そして一度事故が起きれば、その影響は一店舗に留まらず、ブランド全体を一瞬で崩壊させます。

さらに怖いのは、「現場は悪気なくやっている」という点です。今回の従業員の対応も、決して怠慢ではなく、“知らないことによるミス”でした。しかし、食品安全において「知らなかった」は決して許されません。

では、どうすべきか。答えはシンプルです。
「安全基準を徹底的に仕組み化すること」です。

具体的には
・中心温度75℃以上1分以上の加熱基準の徹底
・温度計を用いた確認のルール化
・再加熱時の正しい手順の教育
・全スタッフへの定期的な安全研修

これらを“誰でもできる状態”に落とし込むことが必要です。

飲食業は「美味しさ」を提供する仕事ですが、その前提には必ず「安全」があります。
安全が担保されていない美味しさは、単なるリスクでしかありません。

今回の経験を通じて改めて感じたのは、
「繁盛店とは、安全を当たり前に守れている店である」ということです。

一時的な話題や差別化に走るのではなく、基本を徹底すること。
それこそが、長く愛される店づくりの本質ではないでしょうか。

 

 

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