第584話 「安い店」も「高い店」も危ない…インフレ時代に消える外食チェーンの共通点
―「低価格でも高価格でもない」新しい生存戦略―
近年の外食産業は、かつてないほど厳しい局面に直面しています。最大の要因は言うまでもなく「インフレ」です。原材料費の高騰、人件費の上昇、エネルギーコストの増加。この三重苦の中で、従来のビジネスモデルが通用しなくなりつつあります。
これまで外食産業の戦略は大きく二極化していました。
一つは「低価格戦略」。もう一つは「高付加価値・高価格戦略」です。
しかし今、このどちらも通用しにくくなっています。
崩れ始めた「低価格モデル」
低価格チェーンは、これまで大量仕入れやオペレーション効率化によって利益を確保してきました。しかしインフレ環境では、原価上昇を吸収しきれず、値上げを余儀なくされています。
問題はここです。
「安さ」を売りにしていた企業が値上げをすると、顧客は一気に離れるリスクがある。
つまり、低価格モデルは
“価格を上げた瞬間に競争優位を失う”
という非常に脆い構造を持っているのです。
高価格モデルも安泰ではない
一方で、高価格帯のレストランも安心ではありません。インフレによる生活コストの上昇は、消費者の「外食頻度」を確実に下げています。
特に中間層の財布は厳しくなり、
「特別な日だけ利用する」
という傾向が強まっています。
つまり高価格モデルは
“利用頻度の低下”
という別のリスクに直面しているのです。
今、求められるのは「第三のポジション」
では、これからの外食チェーンはどうすれば良いのか。
結論から言えば、
「低価格でも高価格でもない、明確な価値ポジションの確立」
これが鍵になります。
ここで重要なのは「価格」ではなく「価値」です。
例えば、
- 手頃な価格だが圧倒的に品質が良い
- 高くはないが体験価値がある
- 日常使いできるが少し特別感がある
こうした「ちょうどいい価値」を提供できる企業が、今後生き残っていきます。
FMDI坂本の視点:勝ち残る企業の共通点
私はこれまで900店舗以上の現場を見てきましたが、成長し続ける企業には共通点があります。
それは
「ビジネスモデルが設計されている」ことです。
インフレ環境においては、単なる努力や根性では乗り切れません。
重要なのは以下の3点です。
① 原価・人件費に依存しない収益構造
メニュー設計、仕入れ戦略、商品構成。ここに戦略がなければ、コスト上昇は即赤字に直結します。
② 再現性の高いオペレーション
属人的な運営ではなく、誰でも一定の品質を出せる仕組み。これが人件費高騰への最大の対策です。
③ 顧客を“囲い込む”仕組み
単発の来店ではなく、リピートを前提にした設計。LINEや会員制度などの活用は必須です。
「価格競争」からの脱却がすべてを決める
これからの外食産業は、間違いなく
「価格で選ばれる時代」から「価値で選ばれる時代」へ移行します。
安さだけでは生き残れない。
高級だけでも生き残れない。
重要なのは、
「なぜこの店を選ぶのか?」
という明確な理由を顧客に提供できるかどうかです。
最後に
インフレはピンチであると同時に、大きなチャンスでもあります。
なぜなら、
これまで曖昧だった企業は淘汰され、
本質的な価値を持つ企業だけが残るからです。
今こそ経営者に求められるのは、
「価格に頼らない戦略思考」です。
あなたの店は、
“価格で選ばれていますか?”
それとも
“価値で選ばれていますか?”
この問いに明確に答えられる企業だけが、
これからの時代を勝ち抜いていくでしょう。
