第281話   コロナテックで躍進 

コロナ禍で世の中が右往左往している時に、全世界では米国と中国を中心に有力なスタートアップ企業が続々と誕生していることを日経ニュースが伝えている。

 

コロナテックとは 新型コロナウイルスに端を発した諸問題を解決する技術やサービスのこと。感染を防ぐためオンラインで仕事ができるクラウドサービスや、電子商取引(EC)、治療薬やワクチンなどが該当する。(Nikkei Asian Review 参照)

 

このコロナ禍のなかで世界中に感染が拡大した4月〜6月に新たに世界中で22社がユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上々企業)になった。新型コロナで社会や企業が変わったことを追い風に、業務のオンライン化などのニューノーマル(新常態)に対応した「コロナテック」企業が大きく躍進をしている。

 

実はコロナウィルスの拡大期である4月頃は特にアメリカでスタートアップ企業は苦境に立たされていた。ベンチャーキャピタル等の投資額の減少で多くの企業が人員整理に入り多くの人が職を失った。ただ解雇された人を積極的に採用する企業も出てきて、スタートアップ内での新陳代謝が始まったと言われていた。

 

過去を振り返ると、有力ユニコーンや新興上場企業の多くは08年の金融危機前後に生まれた。エアビーの創業は08年、決済サービスのストライプやウーバーテクノロジーズの創業は09年だ。不況期ゆえの人材の採用しやすさやオフィスの借りやすさを生かし、成長への足がかりを得た。01年のドット・コム・バブル崩壊後も生き残ったアマゾン・ドット・コムはコロナ禍で人々のインフラとなり、株価は最高圏で推移する。

 

経済や社会の激変期は実はスタートアップにとって大きなチャンスだ。03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行時には中国ネット通販のアリババ集団が急成長した。外出自粛の影響でオンライン通販が一気に普及したためだ。08年のリーマン危機前後には前出のウーバーテクノロジーズ、Airbnb(エアビーアンドビー)などが相次ぎ誕生。車や住居などモノの所有から利用する動きを先取りし、成長の足がかりを得た。

 

 

ここ数ヶ月で家庭と職場の境目が曖昧になり利用者がかつてないほど増えたと、スマートフォンアプリの操作方法などを複数の人が同時にデザインできるサービスを提供する米フィグマ社 画面上で絵を描いて遠隔地にいる人に説明するなど、視覚的な昨日が評価されて、在宅で働く会社員の利用が増えていると伝えている。

 

2020年の上位はネット・ソフトウエア関連が5社のほか、クラウドを使ったデータ管理や分析、電子商取引(EC)などいずれも感染拡大を防ぎ、生産性向上につながる業種が占めた。前年同期に上位だった物流関連や旅行などは姿を消し、コロナ下での成長力で明暗を分けた。

 

5月にユニコーンになった中国フィットネスアプリのキープは登録者数が2億人に達した。トレーニング動画の再生や運動記録、食事指導などの機能を持ち、感染予防と健康増進を両立する。生鮮食品EC企業は上海など都市部で生鮮食品のネット販売を展開。注文から最短29分で配送し、外出制限下で注文が急増した。

 

その中で日本が米中に大きく出遅れている様子が見て取れる。技術革新を生み出すスタートアップを育成しなければ、産業の新陳代謝が進まず、国の競争力は落ちていく一方だ。国内スタートアップ投資額は年4千億円程度であり、「米国は14兆円、中国も10兆円を超え、日本とは桁が違う」とインキュベイトファンドの村田氏の言葉として伝えている。

 

スタートアップの神髄は社会課題を見つけ、技術やアイデアで解決することだ。新型コロナは社会に大きな変容をもたらし、新しく生まれた課題はビジネスのヒントになる。逆境の今こそ、起業家精神が強く求められている。

 

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