第293話  業態変更を急ぐ訳とは

今、外食の状況に大きな変化が現れ始めている。業績が回復しない居酒屋業態が業態変更へと急いでいる。

日本フードサービス協会から発表された8月実績でも外食全体で前年比16%減であり少し戻した感はあるもののその中で、居酒屋部門は59%減と半分も回復していない現状となっている。

 

コロナ後を見据えて各社対応に追われていると言った様相だ。

先日、居酒屋大手のワタミが居酒屋全店の3割にあたる約120店を焼く肉店に変更すると発表している。ワタミの創業のブランドであり、主力業態であった「和民」は全店が対象となり、ブランドが消える事になるようだ。

 

ワタミはコロナウィルスの影響で居酒屋の苦戦が続く中、今まで手薄であった家族客に開拓で生き残りを図ろうとしている。

日経電子版が伝えている。

2022年3月までに主力の居酒屋業態330店舗の内約120店舗を新業態の焼肉店「焼肉の和民」に切り替える計画だ。

焼肉店では自社開発したブランド牛「和民和牛」や希少部位を使った「ワタミカルビ」(税別390円)など140品目をそろえ、家族連れや帰宅途中の会社員を呼び込む。と伝えている。

 

コロナで回復出来ない居酒屋業態が今、業態変更に舵を切っている。

コロナが猛威を振るう前から居酒屋業態の苦戦は伝えられていた事もあり、コロナ禍で益々厳しい状況となっているようだ。

特に地元のお客様を対象にしている居酒屋はシニアの外出を控える傾向が大きく客数減につながっているようだ。また、ビジネス街も企業の宴会需要が全くなくなり、大人数での利用は自粛されている。

そして何よりも、リモートワークによるビジネス街の昼間人口の減少が大きく響いている。ランチ営業、夜の営業共に影響は大きい。売上が半分も戻らないと言う理由がわかるところである。

 

日建電子版が8日にその業態変更の様子を伝えている。

神戸のイタリアンバルが一部の店をランチ需要に強いハンバーグ専門店に変更している。

京都の店舗では既存店内に宅配、持ち帰り専門の唐揚げ店を新設している。

落ち込んだ収益を取り戻そうと、飲食店各社が「新業態」での答えを模索していると伝えている。

 

酒類で30%から40%を稼いでいた店舗も酒に依存しない業態への変更で立て直しを図ろうとしている。

 

一方で、宅配需要の広がりを受けて、デリバリービジネスを業態に付け加える企業も増加している。

お客様に来ていただけない分をこちらから攻めに転じて行こうとしている。宅配メニューの開発に余念がない。

 

前出の京都の居酒屋店は年内に約30店舗の店の中に宅配・持ち帰り専用のから揚げ専門店を設置する計画だ。居酒屋の厨房に余力が生まれており、テイクアウトに対応しやすく、フライヤーがあればすぐに作れる唐揚げを売り込もうとしている。

 

飲食は味の評判で客数が変動し、看板を変えると常連客離れに直結する。「既存店の方向転換やメニュー変更は簡単ではない。既存メニューを持ち帰り対応するので精いっぱいな店は多い」(ぐるなびの松尾大エディトリアル・プロデューサー)。それでも各社が店舗形態の変更に踏み切るのは客離れが長引いているからだ。と伝えている。

 

コロナ禍で銀行から融資を受けやすくなったことで、運転資金の一部を設備投資に回す飲食店も増えていると伝えています。

あえてリスクも覚悟で新業態に活路を見出そうとする居酒屋業態の今の状況をお伝えしました。

コロナ後のニューノーマル(新常態)がどのような世界に変化するのかしっかりと見据えて手を打っていきたいものです。

 

 

 

 

 

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