第312話 ショップインショップの「ゴースト店」に活路 宅配好調
ゴーストレストランが活況を呈しているが、今までと少し流れが変化してきているようだ。
デリバリーの売り上げが低下し始めている。全体では大きく伸びているのになぜ?
今まで、デリバリーはかなり好調に推移してきている。しかし個店別に見ていくとかなり様相は違っているようだ。
飲食店のデリバリー参入、ゴーストレストランの大規模な参入とデリバリーをするブランドが急増していることが、競争を産んでいる。
1店舗あたりのデリバリーの売り上げが当初に比べると大きく減少しているようだ。
そんな中での対応策として、ショップインショップ型のデリバリーブランドが大活躍している。
店舗型の飲食店は通常は自社の商品をデリバリーすることに集中していた。しかし、前出のようにデリバリーの売り上げが低下したことから、自社のブランド以外の商品(料理)を別ブランドで販売を開始しているのだ。
厨房は使えるので、自社ブランド商品(料理)に他のブランドで2、3のブランドの販売を開始している。そしてショップインショップ型のブランドを提供するFC本部も登場しており活況を呈し始めている。
中華もあればイタリアンもあり、うなぎまで登場している。店舗の厨房をフル活用できることは生産性の向上にはまたとない機会となっている。単品の提供がオペレーション的にはスムーズに行っているようだ。
お客様からすると、どこにお店があるのかは二の次ですから、どんな商品を届けれるかに注力している。
また、実際の飲食店のデリバリーは、既存の商品(料理)との価格の比較がされることから売価を触ることは難しいが、実店舗の無いブランドでは最初からデリバリーの費用を加味した価格設定で勝負ができることから優位性はあるようだ。
日経電子版がその様子を伝えている
外食各社が看板や客席のない「ゴーストレストラン」を相次いで開いている。宅配と持ち帰りに特化した調理施設だけの業態で、初期投資は通常店舗の2割程度で済むという。ネット上では専門ブランドが多く立ち上がるが、巣ごもり消費で消費者の選別が今後本格化しそうだ。
居酒屋「芋蔵」を展開するジェイグループホールディングス(HD)は2020年12月から、休業中の店舗を活用してゴースト事業に参入した。名古屋市に加え、2月から愛知県豊田市と豊橋市でも順次始めている。注文は飲食宅配代行のウーバーイーツを通じて取る。「餃子の王道」やタイ料理の「魅惑のガパオ食堂」をはじめ20種のブランドを展開。うち19種はゴースト専門だ。
調理する場所は同じ店でも、あえて別々のブランドとして消費者に見せている。ウーバーイーツのアプリ上では「料理の種類ごとに分かりやすい店名と写真を付けた方がより多くの集客につながるからだ」(担当者)。
開店後も接客の必要がないため、一定の売り上げを確保すれば利幅が出やすい。同社は20年12月から出前館で10のブランドを展開。休日は1日60~100件の注文が入るという。1件あたりの平均単価は2000~2500円。調理場は1カ所に集中し、ご飯やカツ、ハンバーグなど一部食材は共通化している。
宅配部門は外食産業で数少ない成長分野とされる。調査会社の富士経済(東京・中央)によると、外食産業市場は2020年に全体で28兆円と、前年に比べ16%減だった一方、宅配市場は8%増え3364億円だった。21年はさらに100億円増えるとみる。
新型コロナの収束後も飲食の宅配サービスが「新常態」として消費者に広がり、各社は一定の需要が続くとみている。
しかし、消費者の選別眼は厳しい。飲食業の経営コンサルタントは「ゴーストレストランは実店舗と違い内装や接客で付加価値を付けられず、値段勝負になりがち。外出自粛が一段落すれば需要は減り、店によっては撤退も出るだろう」と話す。
また一方では「ブランドの改廃を簡単にできるのがゴーストレストランの利点」と話す。さえないブランドは廃止・縮小し、好調な店は客席を持つ実店舗を出すことを視野に入れる。